天安門事件から30年 廖亦武インタビュー 聞き手=土屋昌明 一般市民が暴力に抵抗した記録  『銃弾とアヘン―「六四天安門」生と死の記憶』(白水社)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年7月12日 / 新聞掲載日:2019年7月12日(第3297号)

天安門事件から30年 廖亦武インタビュー 聞き手=土屋昌明
一般市民が暴力に抵抗した記録  『銃弾とアヘン―「六四天安門」生と死の記憶』(白水社)刊行を機に

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第4回
中国について態度表明をしない日本

廖 亦武氏
土屋  
 この本では、劉暁波のことが最後に置かれていますね。
廖  
 これは、巻頭の「世界はか細い橋」に対応したもので、「か細い橋」でも渡っていけるということです。劉霞のことがなかったら、この前後対応した編集もあり得なかった。

劉暁波は結局、一般人ではなく、私は一般人のことを書きたかったわけですから、本当は劉暁波のことは取り上げるつもりはなかったのです。彼は私の獄中記を読んで、自分は囚人としては貴族だったと言っていました。その後、劉暁波夫妻を中国から脱出させドイツに招こうとして、ドイツの政府関係者に働きかけていたのです。その記録が巻末の章です。ところが、劉暁波はガンにかかってしまった。本当に絶望しました。それで、この話を後記のように巻末に置き、天安門事件のある結末と見做したのです。
土屋  
 最後に、日本の読者に期待することはありますか。
廖  
 日本は、この三十年間、独裁中国に対する態度が曖昧すぎたと思います。他の国は中国を恐れるなんてことはなかったのに、日本は中国を恐れている。あなたのような一般国民が恐れているということではなく、政府が中国を恐れています。ビジネスの相手としか考えていません。だから二の足を踏んでいる。日本はいつも中国の事件について態度表明をしようとしません。

天安門事件についても、自分の態度を明らかにしていないし、最近の香港の状況についても、百万人もデモに参加しているのに、日本は何ら態度表明をしていません。台湾だって態度表明しているのに、東アジアで最も影響力のある国が何も態度表明しないとは! 日本は中国に対して、ビジネス以外のことは眼中にないかのようです。これは、私を含め、海外の人には理解できないことです。日本と中国は歴史的に非常に密接な関係を続けてきたし、今回、私も初めて日本に来てみて、やはりある種の期待感を持ちました。東京でいくつかの活動に参加し、これまでの日本に対する感想は間違っていたと思いました。

例えば、『中国低層訪談録』の日本語版を出した時、訳者の劉燕子が一冊一冊売っていると言うのを聞いて、日本で本を売るのは、中国で海賊版を売るより恐ろしいなと感じました(笑)。しかし、今回、あなたの他、日本に招いてくれた阿古智子さんや訳者の鳥本まさきさんに会って、魯迅の時代の内山完造や「藤野先生」を想起しました。文化的な血脈というものが不断に続いているんだなと感じたのです。

もし訳者のあなたが天安門事件に関心を持たず、この『銃弾とアヘン』に関心を持たなかったら、日本で「六四暴徒」のことは誰も知らないことになったはずです。私とあなたが直接出会ったからこそ、こういう仕事ができたわけです。
土屋  
 それまでに日本人であなたと接触した人はいなかったのですか?
廖  
 班忠義監督だけでした。
土屋  
 彼は中国人ではないですか。
廖  
 班忠義は日本が長いから日本人みたいなものです(笑)。私があなたとパリで出会ってから、かなりの時間、翻訳の話が進まなかったので、ずいぶん心配していたのですが、班忠義が励ましてくれたんです。
土屋  
 私はベルリンであなたから聞くまで、班忠義さんに会ったことはなかったんです。あなたから聞いて、その後、東京大学の阿古さんが、中国の慰安婦を扱った班忠義監督の『太陽がほしい』の上映会をやったので見に行って、その場で班監督とあなたのことを話したのです。班監督は「廖亦武の友だちなら、私とも友だちですね」と言ったのを覚えています。あの場には、鳥本さんのほか、もう一人の訳者の及川淳子さんもいました。そういう点では、日本での縁がこの本に結ばれたと言うことができますね。

魯迅の時代は、亡命中国人が日本に多く来ていて、それが後に共産党の中国革命にもつながっていったわけで、中国人と日本人が渾沌としたあの時代が、今また想起されるとすれば、今の日本もそう捨てたものではないかもしれませんね。         (おわり)

  (構成/土屋昌明)
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この記事の中でご紹介した本
銃弾とアヘン  「六四天安門」生と死の記憶 /白水社
銃弾とアヘン  「六四天安門」生と死の記憶
著 者:廖 亦武(リャオ・イーウー)
出版社:白水社
以下のオンライン書店でご購入できます
「銃弾とアヘン  「六四天安門」生と死の記憶 」出版社のホームページはこちら
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