イランで行われている 読書推進活動プロジェクト「Read with me」 ~すべての子どもに上質な本を読む権利がある~ 愛甲恵子(翻訳家)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年7月12日 / 新聞掲載日:2019年7月12日(第3297号)

イランで行われている 読書推進活動プロジェクト「Read with me」
~すべての子どもに上質な本を読む権利がある~ 愛甲恵子(翻訳家)

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 この5月、イランで行われている読書推進活動プロジェクトの一つ「Read with me」の現場を見学する機会を得た。このプロジェクトは、「すべての子どもに上質な本を読む権利がある」という理念のもと、2010年にスタートしたもので、本に触れる機会が限られている貧困家庭の子どもたちや村落地域に住む子どもたち、病院で過ごす子どもたち、災害に遭った子どもたちのほか、妊婦さんたちに「本を届ける」活動を行っている。「本を届ける」といっても、プロジェクトメンバーが直接子どもたちに本を手渡すわけではない。地域の保育施設や学校などと連携し、そこで働く教師や大人を通じて子どもたちに本を届けている。本を読む楽しさ、本がある場所の楽しさを、子どもだけでなく、大人も含めた地域全体で共有することを目指すプロジェクトである。テヘランの貧困地域から始まったこのプロジェクトは、この9年のうちに、イラン22州とアフガニスタンのマザリシャリフにまで活動の場を広げた。
さて、今回案内していただいたのは、貧困家庭の子どもたちを受け入れているテヘラン市内の二つの保育施設であった。どちらの施設でも示唆に富む知見を得たが、とりわけ「アーヴァーイェ・マーンデガール・エンパワメントセンター」で目の当たりにした絵本の「読み聞かせ」の風景は印象深かった。それは「読み聞かせ」というよりも、「対話」であった。お話に入る前にその絵本についてのんびりと交わされるいくつもの問答、そこからいつの間にか本編に入っていく様子、そして最終的には子どもたちにも声を出させてお話に巻き込み、クライマックスへと導く構成。その全体が、対話によって生み出されるリズムや流れに沿って即興的に形作られていた。この時絵本は、先生や子どもたちの外側にある特別な世界ではなく、対話の内側にあって参加するものであった。
子どもたちは、絵本が音となって生き生きと立ち上がる「場」を心から楽しんでいた。このように本を楽しむこと、それはRead with meが目指すものと一致するに違いない。筆者はまさにその現場に立ち会ったのだと思う。

見学の時間はごく短かったが、本と子どもたちが幸福な関係を取り結ぶ瞬間は実に刺激的で示唆的であった。子どもたちがどんなふうに絵本を楽しめるか。そのことを真摯に考え続け、丁寧に仕事を進めていくRead with meを、これからも注目していきたい。

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