連載 フォルムによる批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 114|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年7月16日 / 新聞掲載日:2019年7月12日(第3297号)

連載 フォルムによる批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 114

このエントリーをはてなブックマークに追加
1990年代に撮影
HK 
 ありとあらゆる批評家に関わる問題ですが、作品を選び取るという考えの背後には、特定の作品を通じて、批評家自身の哲学を発展させるという態度があるように思えます。そこから、批評のアカデミズムが生み出されるのではないでしょうか。
JD 
 良い批評家とは、作品の中に入り込むことのできる批評家です。フォルムを通じて作品の内部に入ることを好むものです。
HK 
 作品を媒介として、自分の考えを展開させているように思えます。
JD 
 作品の中に入り込んだ後に、自分の考えを発展させ、理論などを作り上げていくこともあります。しかし、批評にとって何よりも大事なこととは、作品を感じ取ることです。非常に多くの場合、芸術家は、本当に優れた批評家が作品を感じ取るようには、自身の作品を理解することができません。なぜならば、批評家の持つ感性と芸術家の持つ感性は異なるものだからです。芸術家は何かを感じとり、知覚を通じて自身の感じ取ったものを伝えます。優れた批評家はものごとを感じとり、知性により理解します。そして、ありふれた批評家たちは、出版社から対価を得ているだけです。問題となるのは、金銭です。
HK 
 (笑)。
JD 
 以前、ヒッチコックの『鳥』のカンヌ記者会見の様子を話したことがあったと思います。まさしく批評の問題が見えた光景でした。多くの批評家たちは何も理解していませんでした。しかし、彼らは自身がその場にいることを誇らしく思っていたのです。
HK 
 ドゥーシェさんがよく言われるように、彼らは「映画を好きでいる以前に、批評家でいる」ことに関心があったのではないでしょうか。
JD 
 その通りです。つい最近でも、ラース・フォン・トリアーの新作で同じ状況が見えます。非常に複雑な作品であり、多くの人々は何も理解することができていません。様々な批評に目を通すと、『ザ・ハウス・ザット・ジャック・ビルト』は、熱狂的に褒め称える人々と、この上なく毛嫌いする観客を作り出したようです。しかしながら、褒め称える人々でさえ、何も理解していません。それでも、彼らは何かがあることを感じ取り、好きだと言っています。そして、当然のように作品を嫌いだと言っている人々は、何も理解しようとしていません。
HK 
 批評家の問題としては、どこかに定式化されたヒエラルキーがあり、加えてスノッブな態度もあるのだと思います。例えば、「もしラース・フォン・トリアーの新作を理解しないのであれば、優れた批評家ではない」といった態度です。それが理由となり、もし作品について何も考えがなくとも、作品を褒めなければいけないと、無意識的に考えてしまうのかもしれません。
JD 
 批評家の置かれた状況に関しては事実です。しかし、批評とは理解しようとする態度ではありません。批評とは何かを知ることではなく、感じることなのです。問題となるのは、感じることができるか、感じることができないかであり、多くの批評家は何も感じることができないのです。今日になってよく理解できることですが、私の持っていた批評家としての原動力は、批評家ではなかったということです。私は批評家ではありません。私はただ単に、映画を好きなただの観客なのです。映画を愛する一人の人です。そして、その愛を話し続けてきました。私が映画に対してもつ愛を、他の人と分かち合っていただけなのです。
HK 
 半世紀以上にわたり、「愛する芸」という考え方を持ち続けていますね。
JD 
 私が自身の批評に対して、適当な理由で「愛する芸」という名称を与えたわけではありません。そのような表現は、決して私のものではなく、 古代ローマの時代、ラテン語で書かれたものです。「愛するわざ」という表現は、本当に素晴らしい表現だと思います。なぜならば、何かを愛するための一つの芸であるからです。男が女もしくは子供を愛するように、非常に単純なことでさえありえる。愛するということには、そのように直接的な部分があります。
〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ジャン・ドゥーシェ 氏の関連記事
久保 宏樹 氏の関連記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」のその他の記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」をもっと見る >
芸術・娯楽 > 映画 > 映画論関連記事
映画論の関連記事をもっと見る >