第三五回太宰治賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2019年7月19日 / 新聞掲載日:2019年7月19日(第3298号)

第三五回太宰治賞 贈呈式開催

このエントリーをはてなブックマークに追加
選考委員と受賞者の阿佐元明氏(中央)
 去る6月17日、第35回太宰治賞の贈呈式が行なわれた。

本年度、1201篇の応募の中から受賞作に選ばれたのは、阿佐元明氏「色彩」。主催者挨拶で筑摩書房社長の喜入冬子氏は、昨年まで太宰賞の選考委員を務められ、5月16日に急逝された加藤典洋氏について、「20年の永きにわたり選考委員を務めてくださった加藤典洋先生がお亡くなりになった。昨年選考委員を辞された時、本賞からデビューした作家の津村記久子氏が選考委員に加わることを本当に喜んでくださっていた。この場を借りて深く感謝し、ご冥福をお祈りしたい」と述べた。

選考委員の中島京子氏は受賞作について、「受賞作は私にとって際立った印象を与える作品だった。しかしその際立ち方が地味であるという、大変独特のもので、非常に精密な静かな小説であり、読み進めるうちに余計なことは考えなくなってただ読んでいるのが心地良く、湯の中で自然に貝が口を開けるように読書の中でごく自然に開示されてゆく。一番美しかった場面は「色彩」というタイトルにも繋がっていくところで、絵描きを断念した新人を含む、塗装会社の面々が大きな壁に空の絵を描くという場面がある。描いたものはある事情によりあっという間にグレーに塗り変えられ、かき消されるが、絵はなくなっても描いた人の心に何かが残るという、幻のようにかき消されたあとの日常の話だが、読みながら人はみんなそんなふうに小さい気づきのようなものと人生を生きていくのではないかということが感じられて、地味さから滲み出る滋味のようなものがこの作品の個性で魅力だと感じた」と評した。

受賞者の阿佐元明氏は、「創作を始めたきっかけは立川市主催の文芸講座で、そこで誘われた文芸サークルでたくさんの人と出会い小説を教えていただいた。今こうして自分が話している間も全国の公共施設ではあのときの自分と同じように人々が集まり学びあって真剣な眼差しや笑顔を向けあっているのではないか。こうした芸術文化を支える公共事業は長い時間がかかるし、成果が数字にあらわれるものでもない。そのような中で自分自身が地域の活動の中で育ててもらって、回り道はあったけれど、小さな公民館の一室で講座を受けてから20年以上かかってやっと読んでいただけるものを書くことが出来た」と、受賞の喜びと感謝をあらわした。
このエントリーをはてなブックマークに追加
受賞のその他の記事
受賞をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究 > 日本文学研究関連記事
日本文学研究の関連記事をもっと見る >