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American Picture Book Review
更新日:2019年7月23日 / 新聞掲載日:2019年7月19日(第3298号)

「私のプリンセス・ボーイ」

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『My Princess Boy』
Cheryl Kilodavis著/Suzanne DeSimone画
(Aladdin)
『私のプリンセス・ボーイ』は、どのページも背景が淡いピンクに彩色されている。最初のページはピンクのワンピースを着たプリンセス・ボーイだけが描かれている。語り手はお母さん。「私のプリンセス・ボーイは4歳/彼は綺麗なものが好き/好きな色はピンク/女の子っぽいドレスで着飾る遊びをします/美しいバレリーナみたいに踊ります」。

続いてスポーツの得意なお兄ちゃん、ダンスのお相手となるお父さん、仲良しのお友だちが登場する。プリンセス・ボーイはページ毎に青や黄色や紫の可愛いワンピースを着て、皆と楽しそうに遊んでいる。皆がプリンセス・ボーイを大好きで、プリンセス・ボーイも皆が大好き。

お母さんはプリンセス・ボーイと一緒にショッピングに出掛ける。母と子の、とても楽しいひと時。なのにキラキラした服やピンクのバッグを買おうとするとジロジロ見たり、クスクス笑う人たちがいる……。お母さんはプリンセス・ボーイが幼稚園に行く時、彼の大好きなピンクのワンピースを着せ、とても可愛いと言ってあげるつもり。お母さんは読者に問いかける。「あなたは彼を笑いますか/ひどいあだ名で呼びますか/彼と一緒に遊んでくれますか/ありのままの彼を認めて好きになってくれますか」

後書きに、この絵本は母親によるノンフィクションだと書かれている。著者は息子が幼稚園に入る際に先生と話し合い、子供たちが自分と異なる個性を持つ子を受け入れられるよう、プランを練ったとある。その鍵は「思いやり」であり、思いやりを育むには努力と練習が必要と書かれている。

小学生以降になると女装する男の子への虐めは、時には当人が自殺に追い込まれるほど深刻になる。さらに成人となればヘイトクライムの対象になり、中でも黒人は殺人のターゲットにすらなっている。

人は未知のものを恐れ、警戒する。ここまでは本能だ。しかし、警戒を憎悪に増幅させるか、もしくは自分との共通点を見い出し、共生する柔軟性を育むか、これは教育にかかっている。先入観がまださほどない幼稚園児が「自分は女装(男装)しないけど、する子もいる」「それ以外にあの子と自分に違いはない」と考えるように導くのが教師や保護者、社会の役目だ。全編が愛と思いやりに溢れ、かつ「プリンセス・ボーイの存在を認める」というシンプルなメッセージをページ毎に優しく繰り返す本作は、幼い子供だけでなく大人の心にすら十分に染み渡る。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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