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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年7月19日 / 新聞掲載日:2019年7月19日(第3298号)

連載  ヌーヴェルヴァーグを作った批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 115

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リスボンにて(右端にドゥーシェ、2000年代撮影)

JD 
 愛すること、つまり愛の得難さとは、その複雑さから生み出されるのであり、単純なものではありません。しかし同時に、複雑さと単純さが一緒になっていかなければいません。要するに、「愛する芸」とは複雑でありながら単純なものなのです。
HK 
 そのような「愛する芸」という考え方は、芸術家にとっても不可欠なものだとお考えですか。
JD 
 正真正銘の芸術家であるならば、その芸術は愛によってこそ機能するはずです。もし芸術家が、ただの制作者でしかないのであれば、その作品に愛はありません。ただの制作者の抱える問題とは、本当に好きになれていないにも関わらず、どこかで自分は芸術を好きなのであると、自身に信じ込ませなければいけないところにあります。
HK 
 おそらくドゥーシェさんの世代の持っていた強みであり、その後の世界で徐々に失われてしまったものとは、映画に対する愛だったのかもしれません。加えて、ヌーヴェルヴァーグの大きな原動力には、コミュニケーションが存在していたのではないでしょうか。トリュフォー、ゴダール、ロメールなど、根本的な考えは違えども、一つのイデオロギーを作るために多くの話し合いが必要だったはずです。
JD 
 はい。私たちの間には、十分に共有できる映画に対する愛がありました。定義するのは非常に困難ですが、共通して「映画とは何よりも享楽的な芸術」であるということを理解していました。私たちの世代は、第一にそのような考えを持ち続け、理論などは二次的なものであると理解したのです。トリュフォーは最も明瞭でわかりやすい批評家でした。しかしトリュフォーの行なっていたこととは、作品から一定の距離を取ることであり、結局のところ他の批評家よりも面白いものではありません。彼の映画が決して悪いものであるということではなく、ゴダールのようには面白い作品を作れなかったということです。
HK 
 ゴダールの書いた批評を読むたびに思うのですが、外国人の目からすると非常に〝悪い〟文章です。
JD 
 ゴダールは、自身の文章がいいものであるか悪いものであるかなど気にかけていなかったからです。
HK 
 詩的といえばいいのか、彼の映画のように、イメージの連なりで文章が組み立てられているように感じます。加えて、表現が非常に汚い(笑)。その後のゴダールを知っていると非常に面白いものですが、決してトリュフォーのように優れた批評家ではなかった。
JD 
 私たちの中で、最も優れた文章を書いていたのはロメールです。彼の文章は本当に優れたものでした。
HK 
 ロメールは、本格的に映画批評を始める前に、ガリマールから小説を出版していますね。
JD 
 ロメールは、昔から文学の感覚を持ち続けていました。一方でジャン=リュックは……彼は非常に多くの本を読んでいましたが、ロメールのようにして、文学が関心の中心にあったわけではありません。非常に興味深いことですが、最も多くエクリチュールについて映画を撮ってきたのはゴダールです。
HK 
 ゴダールの取り扱うエクリチュールとは姿を変えるものであり、何かを考えさせるためのものであると思います。ゴダールが一九五〇年代の批評の時代から一貫して変わらないのは、彼の取り扱う文章はイメージなしでは機能し得ないということです。
JD 
 ゴダールは何かを考えさせる文章に加えて、表現のセンスを持っていました。五〇年代の初めに「プロフェッショナルのプロ」という表現をすでに生み出し、それから先に起こることを知ることなしに、多くの映画人を非難しました。つまり、映画を知っていると振舞っていた多くの人々、ただのバカは、専門家であると言いつつも、実はただの商売人であると、言い切ってしまったのです。非常に乱暴な表現方法でありながらユーモアに溢れた、良い表現でした(笑)。

〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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