特別寄稿 河合栄治郎著作選集 刊行完結記念|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年7月19日 / 新聞掲載日:2019年7月19日(第3298号)

特別寄稿
河合栄治郎著作選集 刊行完結記念

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河合 栄治郎
思想家、教育家として、戦前・戦中・戦後と論壇を席巻した河合栄治郎。
今回は、『河合栄治郎著作選集』の刊行完結を記念して、編纂に携わった方々にご寄稿いただいた。
ポピュリズムに揺れる令和の日本に、河合栄治郎の思想が今こそ必要なのではないだろうか。           (編集部)
目 次

第1回
『河合栄治郎著作選集』完結によせて

川西 重忠氏
『河合栄治郎著作選集全五巻』の完結をまずはともに慶びあいたい。

とりわけ二年に渡り編集作業に当たられた各巻の担当者をはじめとした「河合栄治郎研究会」の会員諸氏と一般財団法人「アジア・ユーラシア総合研究所 河合研究プロジェクト」の関係者の皆様に感謝申し上げたい。

本著作選集発行元の一般財団法人「アジア・ユーラシア総合研究所」は前身の「桜美林大学北東アジア総合研究所」の知的資産、人的資産を引き継ぎ、研究所の設立理念である「絶対価値の確立」「人格の完成」「道徳倫理の実践」を旗印に講演活動と出版活動を通じた社会貢献事業に取り組み、人材育成と文化の承継を図ってきた。今期の成果が『河合栄治郎著作選集』の企画刊行であった。

「アジア・ユーラシア総合研究所」(以後アユ研と略称)は二〇一七年四月の創立であるが、創立時に私は役員会で次のように説明した。「当研究所は単に収支を求めるという他の民間企業や法人組織と違い、文化と歴史の承継を図り、近代日本の社会歴史に大きな影響を与え、思想文化に貢献した思想家、教育家、企業人で、今の時代に忘れ去られようとしている偉人に対しフォーカスを当て、毎期通年計画でその代表的著作選集の復刊を企画発行したい」と訴えた。

創立初年度の当研究所の特別出版プロジェクトとして日本労働運動、生協運動、農協運動の創始者で、キリスト教伝道者、教育者、文筆家の賀川豊彦の主要著作を網羅した『賀川豊彦著作選集全五巻』の発行に踏み切った。

戦前戦後の欧米において、「ドイツのシュバイツアー、インドのガンジー、日本のカガワ」と呼ばれ、現代世界の三大偉人とまで称賛され三度もノーベル賞候補に挙げられた日本の賀川は、一方では代表作『死線を越えて』は累計販売部数四〇〇万部という大ベストセラーの作家でもあった。しかしいつしか賀川の名前を聞くことはなくなり、全国の書店においても賀川の主要著作は入手できない状況が続く。「賀川豊彦」の存在を日本の歴史から抹消してはならないという利益を度外視した使命感と熱い情熱から出発した出版プロジェクトであった。

今回の『河合栄治郎著作選集全五巻』の発行も、基本的に研究所設立の活動理念を踏襲している。

幸いにも河合栄治郎の名前は、最近マスコミ上でも取り上げられるようになった。しかし、河合栄治郎は賀川豊彦と同様に、戦後の経済復興の躍進とともに急速に忘れ去られてきた。河合の生前の活躍を知る戦中、戦前に教育家、思想家として論壇を席巻した河合の復権を私たちは待ち望んできた。今回の「河合著作選集」には、思想家としての河合、教育者としての河合、人間としての河合の本質、エキスがたっぷりと詰まっている。思えば五十年ぶりの河合全集に続く纏まった河合著作選集なのである。

今回の河合著作選集発行プロジェクトの中核になった有力会員は、今では五十歳前後の大学教授である。大学で教鞭をとる傍ら、河合研究者としても日本を代表する少壮研究者に成長した。

「河合栄治郎研究会」が創立されたのは、今から四十年近く前になる。その時、河合教授のご子息である河合武氏と研究会の設立趣旨を次の三点に定めた。

1.河合栄治郎の人と思想に関心を持つ人は誰でも自由に入会できる。
2.研究会は会費無料とし寄付、入会資格は一切求めない。
3.会の運営が会計や人事でおかしくなる時は、速やかに閉会とする。


中国漢の高祖の「法三章」ではないが、四十年間この規則を守り続けてきた。

ひところ全国で二〇〇名の会員を擁した河合研究会は、今は有志のボランティア中心の活動となり、参加者は五十名前後と減少しているものの年に数回は研究会の活動を継続している。河合の思想哲学、人生観、教育観が途切れることなく若い学生中心に河合研究者が誕生していることは、何よりも嬉しい限りである。

現今のポピュリズムに揺れる日本の政治社会教育界に、今回の『河合栄治郎著作選集全五巻』の発行完結は、河合精神の復権を待ち望むものにとって河合教授の思想と全人格をご紹介する絶好の機会である。自信を持ってお贈りする。今後本著作選集が学生、一般読書人に挙って末永く読まれることを期待したい。
((財)アジア・ユーラシア総合研究所長、桜美林大学名誉教授)

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