2019年上半期の収穫から Part1|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年7月26日 / 新聞掲載日:2019年7月26日(第3299号)

2019年上半期の収穫から Part1

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イラストレーション:もちづきみちよ
令和最初のアンケート特集、「2019年上半期の収穫」。
さまざまな分野の専門家、研究者、作家、書評家、書店の方などに、上半期、印象に残った三冊を挙げていた
だきました。夏休みに読みたい一冊、読み忘れていた一冊がきっと見つかります。 (編集部)


【2019上半期の収穫から 執筆者一覧】
阿部公彦(英米文学)/五十嵐太郎(建築史)/池田喬(哲学・倫理学)/石原千秋(日本近代文学)/岩本真一(衣服産業史)/植村八潮(出版学)/臼杵陽(中東地域研究)/大野公賀(中国文学)/小川さやか(文化人類学)/落合博(Readin’Writin’)/片岡大右(仏文学・社会思想史)/鎌田東二(宗教哲学)/木村玲欧(防災・減災学)/木本好信(日本古代政治史)/倉本さおり(ライター)/郷原佳以(仏文学)/齋藤純一(政治理論)/齋藤元紀(哲学・倫理学)/佐々木力(科学史・科学哲学)/渋谷謙次郎(ロシア法)/砂川秀樹(文化人類学)/関智英(中国近現代史)/先崎彰容(日本思想史)/立川孝一(フランス史)/
第1回
哲学・倫理学   齋藤 元紀

亀井大輔『デリダ 歴史の思考』(法政大学出版局)近年刊行された講義録や伝記的・書誌的事実を踏まえ、一九六〇年代を中心とする初期デリダの歴史的思考の生成と変遷を追う。フッサール、ハイデガー、レヴィナスとの争点も手際よく整理されている。

モーリス・メルロ=ポンティ『コレージュ・ド・フランス講義草稿 1959―1961』(松葉祥一・廣瀬浩司・加國尚志訳、みすず書房)ヘーゲル以後の「非・哲学」に挑むメルロ=ポンティ最晩年の三つの講義草稿と未発表の下書き等の補遺を収録。未完『見えるものと見えないもの』の展開を究明するための最重要資料。

古田徹也『ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考』(角川選書)『論理哲学論考』から最重要と目される文章を抜粋、順を追って一つひとつ丁寧に読み解く。入門書ながら、言語の限界に迫るウィトゲンシュタインの歩みを体感できる好著。(さいとう・もとき=高千穂大学教授・哲学・倫理学)

日本近現代文学   日比 嘉高

中川成美・村田裕和編『革命芸術プロレタリア文化運動』(森話社)。文学、運動理論、演劇、美術、宗教、メディア、ジェンダーなどプロレタリア文化運動を見渡す最新の成果。『昭和戦前期プロレタリア文化運動資料集』の研究会メンバーらが、成果を踏まえて編んだ。圧巻の参考文献目録、左翼演劇公演一覧表、団体名称一覧、組織変遷図が付く。

田口麻奈『〈空白〉の根底 鮎川信夫と日本戦後詩』(思潮社)。鮎川信夫および「荒地」を軸に戦後詩の展開を追った労作。研究史の整理、詩集の分析、詩史的再評価、新資料発掘など、いずれも時間をかけた重厚な研究書である。

稲岡勝『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』(皓星社)。明治の教科書出版社金港堂の決定版的研究。資料(文学者の日記も)を博索し、信頼性抜群の書店史とした。のみならず資料探索のノウハウを惜しげもなく公開する。高度な専門書であり入門書という離れ業。(ひび・よしたか=名古屋大学准教授・日本近現代文学・文化論)

日本史学   長﨑 健吾

望月優大『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(講談社)。外国人労働者受入による国のかたちの変容が「日本人」の選択によって出現した眼前の現実であること、「移民政策ではない」という政府の見解がもはや建前としてすら破綻していることが、法律の文言や統計データの分析を通じて説得的に示される。

坂東洋介『徂徠学派から国学へ』(ぺりかん社)。荻生徂徠や賀茂真淵の思考を手がかりに、物にじかに手を触れているという実感に充足して普遍的・抽象的な理論を忌避する日本の思想的風土と対決する試み。

原秀三郎述、磯前順一・磯前礼子編『石母田正と戦後マルクス主義史学』(三元社)。古代史家の原秀三郎へのインタビューによる戦後歴史学の回想と、アジア的生産様式論争をめぐる編者の論考一篇を収録。歴史研究をめぐる理論闘争が社会変革の実践につながっているはずだという信心は、今日の私たちにとってほとんど異文化に属す。歴史学もまた歴史のうちにある。(ながさき・けんご=東京大学大学院人文社会系研究科博士課程・日本史学)

Readin’Writin’   落合 博

オフィスラブ(職場恋愛)の経験がある。小説に描かれたオフィスラブを考察した西口想『なぜオフィスでラブなのか』(堀之内出版)によると、結婚したカップルの三組に一組は職場・仕事での出会いがきっかけだったという。「公私混同」なくしてこの国は維持できない。蛇足だが、タイトルの「で」がいい。新聞記者時代、スポーツを取材していた。東京2020招致が決まった2013年9月以降のゴタゴタにはうんざりするばかりだった。小笠原博毅・山本敦久『やっぱりいらない東京オリンピック』(岩波書店)は東京大会を〈社会的災害〉として批判する。僕が「どうせやるなら派」と決別するきっかけとなったブックレット。スポーツは男性のもの、なんていう人は今どきいない。だが、古代オリンピック以来、女性は「ふさわしくない存在」としてスポーツから排除され、近代オリンピックへの参加も容易ではなかった。レイチェル・イグノトフスキー『歴史を変えた50人の女性アスリートたち』(野中モモ訳、創元社)は偏見や差別に抗し、歴史を切り開いてきた女性たちの物語だ。(おちあい・ひろし=Readin’Writin’店主、東海大学非常勤講師)
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