2019年上半期の収穫から Part2|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年7月31日 / 新聞掲載日:2019年7月26日(第3298号)

2019年上半期の収穫から Part2

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第4回
div class="sub_title">衣服産業史   岩本 真一


文化学園服飾博物館編著『世界の民族衣装図鑑』(ラトルズ)は同博物館コレクションから世界69カ国約500点の民族衣装をオールカラーで紹介。点数からしてもコンパクトな説明からしても概説に相応しい。類似書が多いなかやや区別化に欠けるか。

友松夕香『サバンナのジェンダー』(明石書店)はギニアを中心に西アフリカ農村社会を捉えた精力的なルポ。開発経済の前後で変わらない生活と変わった生活に詳しい。その上に男女という人間関係を重ねた時、どのような社会が見えてくるのか。都市部中心のジェンダーやフェミニズムに慣れた私たち自身から距離を置くために大切な一冊。

山田敦士編『中国雲南の書承文化』(勉誠出版)は中華・チベット・東南アジアに囲まれた独特な多民族地域雲南省を取りあげる。雲南省ゆえの多様な言語のもとで、書き残して伝えるという行為(書承文化)を重視し、民族に留まらず言語の多様性にまで迫る。重層的な地域にもかかわらず素朴さが残る雲南省からは、グローバル社会を活きる私たちが実践すべき行為を学ぶことができる。(いわもと・しんいち=大阪市立大学・同志社大学ほか講師・衣服産業史)

環境社会学    戸田 清


デイビッド・T・ジョンソン『アメリカ人のみた日本の死刑』(笹倉香奈訳、岩波書店)。先進国のなかでいまだに死刑を執行している日米であるが、死刑判決を出す手続きの慎重さなど、多くの点で日本は米国にも立ち遅れているようだ。最近の米国で死刑のモラトリアムや廃止を表明する州が相次いでいることも想起される。

ダニエル・エルズバーグ『国家機密と良心 私はなぜペンタゴン情報を暴露したか』(梓澤登・若林希和訳、岩波書店)は、興味深い独占インタビューである。冷戦時代に核戦争の死者予測が6億人であったことに改めて衝撃を受ける。

文聖姫『麦酒とテポドン 経済から読み解く北朝鮮』(平凡社)。朝鮮半島の非核化をめざす流れになってきたいま、北朝鮮の実情を知るための好著である。

最後に僭越だが、戸田清『人はなぜ戦争をするのか』(法律文化社)。古代階級社会の成立とともに戦争が始まったこと、日米の戦争などを論じる。(とだ・きよし=長崎大学教員、環境社会学・平和学)

日本古代政治史   木本 好信


平林章仁『物部氏と石上神宮の古代史』(和泉書院)

近年盛んに論じられる蘇我氏に比べていまだ明らかになっていない物部氏の実像や物部氏が祀る石上神宮の本質とその祭祀の変遷、ヤマト王権と天皇の宗教的性格などについて分かりやすく考述している。なかでも物部氏の台頭過程と仏教崇廃をめぐる政争の実態の記述は興味ある内容。

佐藤信編『古代史講義【戦乱篇】』(ちくま新書)

古代の戦乱について、六世紀初期の「磐井の乱」から十一世紀中葉の「前九年合戦・後三年の合戦」まで、古代に起った戦乱十五件について各執筆者が最新の研究成果に依拠しながら論述する。そして末尾に「さらに詳しく知るための参考文献」一覧が付載されているのは読者への配慮。

古市晃『国家形成期の王宮と地域社会』(塙書房)

五世紀代から王権と地域社会の支配・従属関係は確認できるが、それは安定的な体制ではなく個別の支配関係の集積による慣習的なものと説き、また『播磨風土記』を通じて播磨の地域社会の分析を進めて王権による地域社会統合の過程を段階的に論じることの重要性を指摘する。(きもと・よしのぶ=龍谷大学文学部特任教授・日本古代政治史)

日本近代文学   馬場  美佳


重信幸彦『みんなで戦争 銃後美談と動員のフォークロア』(青弓社) 近代文学にとっての圧倒的な他者といえる銃後美談。戦争が生んだ無反省な物語群だと突き放すのは簡単だが、民俗学者の著者は「逆なでに読む」。美談は脚色ではない、動員の空気の恐ろしさという真実なのだと。美談と相対した作家たちを知るために必読の書。

稲岡勝『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』(皓星社)出版物の影に隠れてしまいがちな出版社の実態解明は、研究方法からして未開の領野だった。本書は出版物や史料等の批判的読解を徹底させ、本格的にして新たな近代出版史研究の誕生を告げる待望の一冊。

関礼子『演じられる性差 日本近代文学再読』(翰林書房)近代文学研究において、ジェンダーという主題と語り論という方法を接合させうる段階の到来を実感した著者が、文学的実践の数々の「演じられる」性差をめぐり豊かに横断する。再読という創造的な読書行為への誘い。(ばば・みか=筑波大学人文社会系准教授・日本近代文学)
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