2019年 夏の文庫特集号  文庫本というミクロコスモス 亀山郁夫さんが文庫を買う!|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月2日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

2019年 夏の文庫特集号
文庫本というミクロコスモス
亀山郁夫さんが文庫を買う!

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第4回
●スタニスワフ・レム『ソラリス』/●レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国』/●島田雅彦『島田雅彦 芥川賞落選作全集 上・下』/●村田沙耶香『コンビニ人間』

●スタニスワフ・レム『ソラリス』(沼野充義訳・一〇〇〇円・ハヤカワ文庫)
「人生百年時代を豊かに生きのびる術は、小説と映画を同時並行で楽しむこと」というのが僕の持論。

実は、最近、私の勤める大学で、「私の《世界一》の映画」という連続講演会がはじまったのですが、僕がまっさきに思い浮かべたのが、タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』。母と妻との葛藤を、広大な宇宙をさまよう宇宙船に舞台を移して描いている。並外れたスケールの映画です。挿入されるバッハのBWV639もいい。といっても、レムは「原作が歪められた」と、タルコフスキーと大喧嘩になったそうですが(笑)。原作は、旧訳で読んだことがあるだけです。でも、みなさんにはぜひとも新訳で読んでほしい。ソダーバーグのリメイクも含めて、世界の映像作家がなぜ『ソラリス』にひきつけられてきたか、そのあたりを確認してみると面白いと思います。


●レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国』(宇野利泰訳・一一〇〇円・創元SF文庫)
じつは『ソラリス』を新訳した沼野充義さんから、亀山さんはSFなんて全然読まないのでしょう、とからかわれたことがあります。図星でした。少年時代にヴェルヌ『地底旅行』を読んだことがあるくらいです。でも、SF映画は好きで、最近も『インターステラー』『ブレードランナー二〇四九』を観ました。ところで、途中で完全にストップしている連載があるのです(『わたしの運命論』)。その中で、「バタフライエフェクト」(例の「ブラジルの一匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか」ですね)を取り上げ、ブラッドベリ原作の映画『サウンド・オブ・サンダー』を観、原作を読んで魅了されたのです。ドストエフスキーばかりではなく、自分をもっと豊かに開くには、SFを、ブラッドベリを読まなきゃと思い、傑作と呼ばれるこの一冊を選びました。


●島田雅彦『島田雅彦 芥川賞落選作全集 上・下』(上巻一〇〇〇円・下巻一〇〇〇円・河出文庫)
島田さんも、デビューしたときから、ずっと読み続けている作家の一人です。最近では、『虚人の星』『カタストロフマニア』を続けて読みました。思うに、彼ほど、賞に恵まれないというか、評価に恵まれない作家もいません。島田文学の真髄は、僕にまったく欠落している、アイロニー、シニシズム、クリティカルシンキング。そしてぼくにも共有できる、ある屈折した濃厚なロマンチズム。彼の作品の向こうにも、やっぱりエディプス的なものが見えていますね。でも、島田文学のもっとも島田さんらしさは、やはり初期の作品ではないでしょうか。パラノイア的な恐怖とユーモア、母的なものと、ロリータコンプレックス的なものが交錯する不思議な世界。彼が、最高の「芥川賞作家」の一人たりえたことを確認できる「全集」です。


●村田沙耶香『コンビニ人間』(五八〇円・文春文庫)
コンビニ人間(村田 沙耶香)文藝春秋
コンビニ人間
村田 沙耶香
文藝春秋
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芥川賞つながりです。恥ずかしながら、実は未読です。世の流れに逆らって読んでいないだけですが、直前に出た『消滅世界』には圧倒されました。あまりの発想の豊かさに、逆に『コンビニ人間』だけは「読みたくない!」という反発を感じたようです(笑)。『消滅世界』のようなすごい小説を書ける人がいて、なおかつ、こんなにも売れる小説が書ける。もう少し、少数者のための世界であって欲しい。そんな思いもありました。

しかし、ともかくぼくの知人、友人が激薦する。片山杜秀さんもその一人。これを読まないと時代についていけなくなると思い選びました。というか、東京と名古屋の二局生活を送る僕自身、週の前半は、完全なコンビニ人間。コンビニ人間と聞いて思うところがあります。
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