2019年 夏の文庫特集号  文庫本というミクロコスモス 亀山郁夫さんが文庫を買う!|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月2日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

2019年 夏の文庫特集号
文庫本というミクロコスモス
亀山郁夫さんが文庫を買う!

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第5回
●東山彰良『ジョニー・ザ・ラビット』/●井上荒野『赤へ』/●伊坂幸太郎『グラスホッパー』/●イアン・マキューアン『贖罪』

●東山彰良『ジョニー・ザ・ラビット』(六〇〇円・双葉文庫)
東山さんは本当に注目している作家の一人で、驚くばかりの才能です。

『僕が殺した人と僕を殺した人』が凄い作品で、夢中で読みました。みんなに勧めています。超ドライなハードボイルドだけれど、純文学的でもある。二つの領域がここまで接近して、こんなに凄い小説が生まれた、まさに文学の新しい道を示している作品といえるでしょうね。ところで、ここで選んだ作品は、「ジョニー」と呼ばれるウサギの探偵が出てくるお話のよう。何かメルヘンチックな匂いがする小説ですが、これがハードボイルドとどう接合するのか、あるいは、『僕が殺した人』とどんな接点があるのかとても興味をそそられました。

ともかく、東山さんの作品をもう一回読み直す出発点を持ちたくて、選びました。


●井上荒野『赤へ』(六二〇円・祥伝社文庫)
赤へ(井上荒野 )祥伝社
赤へ
井上荒野
祥伝社
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井上荒野さん、実はずっと名前だけで、どんな作家か知らずにきました。ただ、最近、『ママがやった』の書評を読んでとても興味をひかれました。また、井上光晴さんのお嬢さんだったんですね。大昔、学生時代にいちどだけ、お会いしたことがあるのです。もちろん遠くからでしたが。その井上光晴さんの奥さまと、光晴さんと長年男女の仲だったとされる女性作家の物語をつづった小説『あちらにいる鬼』が評判だとうかがっています。そんなこともあり、井上さんのこの『赤へ』がストレートに目に入ってきました。しかも、帯に柴田錬三郎賞受賞とある。もちろん賞で選んだわけではありません。本そのものがはらむ異様な雰囲気に興味をそそられました。人間の死をめぐる十の短編を集めたもののようですが、何か今からわくわくしています。


●伊坂幸太郎『グラスホッパー』(五九〇円・角川文庫)
正直、大のサスペンス映画ファンなのです。ヒッチコックで目覚めました。とくに古い時代ものが好きですね。伊坂幸太郎さんの小説も、これまで読んだことがありません。ただ、『重力ピエロ』の映画を観たのがきっかけで、そのうち彼の小説世界に接したいと願っていました。伊坂さんが気になっていたのは、彼が、ドストエフスキーの『罪と罰』からつよい影響を受けているということを知ったことにも原因があります。将来、「ドストエフスキーと日本文学」という本を書いてみたいと考えているのですが、「伊坂幸太郎とドストエフスキー」がその一章を飾ることになるかもしれません。そんな隠された動機もあって、彼の作品の中でも、傑作のひとつされるこの小説からアプローチしようと思っています。


●イアン・マキューアン『贖罪』(小山太一訳・八四〇円・新潮文庫)
贖罪(イアン・マキューアン)新潮社
贖罪
イアン・マキューアン
新潮社
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今回の選書で最初に在庫を確認し、手に取ったのがこの作品でした。

猫町倶楽部という、若い人たち中心に活動する読書サークルがあります。東京、京都、名古屋、九州にそれぞれ支部を持つ団体で、僕も自分の翻訳作品をテーマに何度か講演を行ったことがあります。ともかく、すばらしい熱気にあふれていて、感動的です。

ここの会員である知人に、今回の選書の話をしたところ、ぜひ、紹介してほしいと頼まれた「イチオシ」が、これなのですね。猫町倶楽部でも取り上げられ、たいへんな人気だったそうです。二〇〇一年にブッカー賞最終候補作にもなったとのこと。さっそく読みはじめました。3つの時空間が錯綜するメタフィクション。どこか、カズオ・イシグロの世界観に通じるものがあり、できるだけ早いうちに集中して読みたいと念じています。
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