虹を待つ彼女 / 逸木 裕(KADOKAWA)彼女はなぜ自殺したのか 「劇場型自殺」から始まる横溝賞受賞ミステリ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月3日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

彼女はなぜ自殺したのか
「劇場型自殺」から始まる横溝賞受賞ミステリ

虹を待つ彼女
出版社:KADOKAWA
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渋谷のスクランブル交差点を見下ろす雑居ビルの上に、ひとりの女性が佇んでいる。

彼女の傍らには銃を積んだ四台のドローンがあり、それらが交差点に向かって飛行していく。女性が操作しているわけではない。彼女は優秀なゲームクリエイターで、自ら作った「渋谷でゾンビと戦うオンラインゲーム」とドローンを連携させ、何も知らないゲームのプレイヤーに操作させているのだ。ドローンは群衆に向かい銃撃をはじめる。そして、そのうちの一台がビルの上に戻ってきて、彼女を撃ち殺す……。
『虹を待つ彼女』はこのようなプロローグからはじまります。読者は物語を頭から読みはじめるものですが、作者もこの物語を冒頭から着想しました。

いまでも覚えています。会社でプログラムコードを書いていたところ(作者はエンジニアもやってる兼業作家なのです)、突然何の前触れもなく、くだんのビジョンがだーっと脳になだれ込んできたのです。最初は女性がなぜそんなことをやっているのかもよく判らず混乱するのみでしたが、やがてここからはじまる物語を書けばきっと面白いものになるという予感が徐々に湧いてきました。その後苦心をしながら書き上げ、幸運にも横溝正史ミステリ大賞をいただくことができ、この度角川文庫に所収されたものが本書になります。

冒頭のワンシーンから物語を展開させていったため、本作は執筆過程で様々なトピックを巻き込み膨らんでいきました。本筋は「ゲームクリエイターの女性はなぜそんな方法で自殺をしたのか」という謎を追うミステリですが、彼女を人工知能で蘇らせようとする、頭はいいけれどハートは冷たい男性の青春小説でもあります。会話型AI、囲碁を打つAIなどの人工知能もたくさん出てきますのでテクノロジーの解説書という側面もありますし、ここには書けない要素も幾つか入っています。

本作を書くのはエキサイティングな体験で、一粒の種が芽を生やし、木に育って枝葉を茂らせるように、「え、こうなるのか?」「あ、本当はこういう話だったんだ」と日々物語が成長していくのを感じながら執筆したことを覚えています。気軽に読め、冒頭から最後の一行まで読者を飽きさせないことを目指して綴ったエンターテインメントですので、作者が楽しんで書いた以上に、読者の皆様にお楽しみいただけますと幸いです。
この記事の中でご紹介した本
虹を待つ彼女/KADOKAWA
虹を待つ彼女
著 者:逸木 裕
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
「虹を待つ彼女」出版社のホームページはこちら
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