警察庁特命捜査官 水野乃亜 ホークアイ / 7069(双葉社)社会の縮図である警察組織 人間同士の対立をドラマティックに描く|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月3日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

社会の縮図である警察組織
人間同士の対立をドラマティックに描く

警察庁特命捜査官 水野乃亜 ホークアイ
著 者:初瀬 礼
出版社:双葉社
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 若手とベテラン、最新技術を積極的に使おう派と旧来のやり方に固執する派、男と女……。いずれの対立構造も私が勤務する会社で日常的に見られる光景であり、みなさんも組織に属していれば似たような経験があるだろう。巨大な警察組織は社会の縮図だし、警察小説に出てくるのは、犯罪を犯した者と、追う側の刑事達であるため、対立軸は殊更、ドラマティックなものになる。沢山の警察小説が世に溢れる中、あえてこのジャンルに挑戦しようと思ったのは、人間同士の対立を面白く描けると思ったからだ。

今回の作品の主人公、若き女性警察キャリア、水野乃亜には保護者的な存在がいる。ベテランのノンキャリ刑事、加藤だ。加藤は、かつて乃亜が無差別殺人事件で父親を殺された時、親身になってくれた警官だ。だが、皮肉にも乃亜が警察庁に入庁後、初めて命じられた本格的な仕事は、その加藤の仕事を奪いかねないものだった。さらに、東京でテロを起こそうとする女テロリスト、その協力者である日本人女性。彼女もまた、ある人物と対立する構図になっている。二人の間にある埋めがたい深い溝。この作品は最新テクノロジーを駆使して、日本に潜入したテロリストを追うと思いきや、高度なテクノロジーとは対極の手法でテロリストハンティングをせざるを得ない、乃亜を含む刑事達の姿が描かれる。エリートであるキャリアの乃亜と、加藤に代表されるノンキャリ組の刑事達は、対立を乗り越えてテロリストを捕まえることができるのか? そこで描かれるノンキャリ魂は自分が一番好きな部分だ。

普段はテレビ局に勤務しているが、入社以来、報道現場に携わってきた。ある日突然、降って湧いた「何か物語を書いてみたい」という欲求。最初こそ、青春ものや、児童文学などを書いていたが、結局、取材を通じて得てきた貴重な体験をベースに書くのが一番いいと気付かされた。自分が見てきた出来事をモチーフにフィクションに昇華する――そうして方向性は決まった。これまでの作品では、中央アジアで起こる戦争や認知症患者のケアハウスなどを描いてきたが、全て実際に見た経験をベースにしている。今回の作品でも過去の経験は充分に活かされている。「フィクションだがリアル」が自分の持ち味だと思っている。小説を楽しみつつ、描かれている場面は、実際にはどんな場所なのだろうと思いながら読んでいただいてもいいかもしれない。

主人公の乃亜はまだ二十代後半、伸び代はまだまだある。すでに第二弾も考えている。ぜひ、一作目となる、この作品を手にとっていただければ幸いだ。
この記事の中でご紹介した本
警察庁特命捜査官 水野乃亜 ホークアイ/双葉社
警察庁特命捜査官 水野乃亜 ホークアイ
著 者:初瀬 礼
出版社:双葉社
以下のオンライン書店でご購入できます
「警察庁特命捜査官 水野乃亜 ホークアイ」出版社のホームページはこちら
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