レギオニス 勝家の決断 / 7076(中央公論新社)全てのレガトゥス・レギオニスに告ぐ 大多数の「私たち」の物語|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月3日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

全てのレガトゥス・レギオニスに告ぐ
大多数の「私たち」の物語

レギオニス 勝家の決断
著 者:仁木 英之
出版社:中央公論新社
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戦国時代をテーマにした書籍は毎年数多く刊行されています。昨今は多くの研究者や作家の努力により、有名武将に加えていわゆるマイナーな武将たちにも光が当てられるようになりました。

歴史上の人物の受容のされ方は時に大きく変わることがあります。南蛮の甲冑を身につけて髪を茶筅に結った、進取の気性に富んだ革新的な武将であると思われがちな織田信長が、実は保守的で騙されやすい側面をもった純粋な人物であったのではないかという説もあるようです。

『のぼうの城』で脚光を浴びた成田長親は全国的にはほぼ無名な武将でしたが、演じた野村萬斎さんの顔で多くの人の記憶に残ることになったのではないかと思われます。

それに対して、やや知られてはいるもののそこまで研究が進んでいるわけでもなく、小説でも取り上げられない人たちがいます。取り上げられたとしても、無数に出る物語の中に埋もれてしまい多くの人に読まれない武将たちがいます。

名は耳にしたことがあり、エピソードの一つや二つは知っているけど、その人がどのような人生をたどり、どんな人物であったのかはよくわからない。柴田勝家はそんな人物の一人です。人材豊かな織田家中でも、天下を獲って多くの記録と伝説が残った秀吉や、次に大河ドラマの主人公になる明智光秀に比べると彼はどこか影のような存在です。

秀吉が出世し、天下をとるための噛ませ犬的に描かれ、本能寺の変の後にとった戦略も賤ヶ岳での戦術もうまくいかず、北ノ庄を枕に自刃を遂げた最期はあまり魅力的に映らないでしょう。あとは、籠城した際に味方の士気を高めるために水の入った甕を割った逸話くらいでしょうか。

ですが、それは彼の生涯からすれば一瞬のこと。尾張下社という小さな城の主から織田家の柱石として長年戦い抜いた男の人生を追い綴っていくうちに、それが天下を取れなかった大多数の「私たち」の物語であることに気付きました。

目の前の仕事を懸命にこなし、家族や仲間を必死で守ろうとする。歴史を知っていればあの時こうしておけばと好きに言えますが、その時は最善と信じた道を進むしかない。それは現代であっても変わりません。属している集団が興隆し、天運と共に大きくなり、ライバルが躍進し、決断の時を迎える。そんな男の戦いぶりと喜び悲しみを共有していただけたら、作者としてこの上なく幸せなこと。柴田勝家の生きざま、ぜひあなたの魂に刻みつけて下さい! 
この記事の中でご紹介した本
レギオニス 勝家の決断/中央公論新社
レギオニス 勝家の決断
著 者:仁木 英之
出版社:中央公論新社
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