朽ちないサクラ 書評|柚月 裕子(徳間書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月3日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

眼前の景色が一変する〝絶景本〟

朽ちないサクラ
著 者:柚月 裕子
出版社:徳間書店
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朽ちないサクラ(柚月 裕子)徳間書店
朽ちないサクラ
柚月 裕子
徳間書店
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いま最も信頼すべき作家は柚月裕子である。『臨床真理』で「このミステリーがすごい!」大賞で大賞を受賞。華々しいデビューから十年。『検事の本懐』で大藪春彦賞受賞などその作品は高い評価を得ているばかりか、『孤狼の血』の映画化も大ヒットし、いまや人気・実力ともに当代随一。新作を世に出すごとに着実に進化し続けているがこの『朽ちないサクラ』も紛れもない代表作のひとつである。

柚月裕子作品の最大の魅力は背筋がピンと伸びるような正義に対する揺るぎない想いである。人は誰でも善を持って生まれてくる。しかし邪悪な欲望によって真実は歪められ、いつしか闇に葬り去られる。目には見えない大きな力によって抑圧される魂の叫びに耳を傾け、漆黒の世界に光を灯すのが柚月文学だ。真っ当なことが正面から言えなくなっているこの時代にこそ必要な物語。柚月作品が世に受け入れられるには理由があるのだ。

柚月作品のもうひとつの魅力は泥臭いまでの圧倒的な人間臭さだろう。組織の中で正論を吐く人間は少数派で決して出世街道の主流に位置している訳ではないが、喜怒哀楽を内に秘めた魅力は、出会った誰をも惹きつける。

どんなに過酷な状況下にあってもそんな先達の存在があれば生きていけるのだ。読み終えれば生きる事、生き続ける事の尊さと美しさに気付かされるはずだ。

『朽ちないサクラ』はそんな柚月作品の魅力を存分に味わえる一冊だ。理不尽な事件をきっかけに背後にあった巨悪の存在を知り、禁断の扉を開けてしまう。警官という職業人としてだけでなく人間としてのプライドを懸けた闘いが繰り広げられるが、そのもどかしさ真摯さに思わず全身が熱くなる。タイトルの持つ本当の意味が分かった瞬間、眼前の景色が一変するのだ。この読みごたえは〝絶景本〟と呼んでもいいのかもしれない。

本書は二〇一五年二月に単行本として刊行され二〇一八年三月に文庫化された。作家のブレイク時期とも重なり書店の店頭も大いに満開となった。しかしこの作品は春シーズン限定では勿体ない。まさに不朽の名作として読まれるべき一冊だ。この四月に書店員と読者の支持による第五回徳間文庫大賞に選出されたのも当然の流れである。受賞記念に柚月氏の写真とメッセージをメインとした新たなジャケットも大好評。そして続編「月下のサクラ」が「週刊アサヒ芸能」連載中という嬉しいニュースも。今から楽しみでならない。
この記事の中でご紹介した本
朽ちないサクラ/徳間書店
朽ちないサクラ
著 者:柚月 裕子
出版社:徳間書店
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