おとなの小論文教室。 書評|山田ズーニー(河出書房新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月3日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

あなたには考える力がある!

おとなの小論文教室。
著 者:山田ズーニー
出版社:河出書房新社
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 「読者がすごい! なぜ、あんな説得力ある投稿が書けるのか?」 本書に出てくる読者投稿に皆まず驚く。ネットの奇跡と言っても言い過ぎではないと私は思う。

二〇〇〇年、「おとなの小論文教室。」を書き始めた頃、私は三八歳で会社を辞めたばかり。小論文通信教育の編集長という仕事も、全国何万という高校生の読者も、全てをなくし、海から干された魚のように、自分が自分でいられなくなっていた。退職前のやりがいがあればあるほど、代わりなんて簡単に見つかるはずもない。居場所を無くし、アイデンティティを無くし、私に唯一できることは、表現教育の経験を賭して、週一回、ネットに表現力を励ますコラムを書くことだった。

連載開始当日からメールでバンバン反響がきた。聡明でピュアで経験に基づく説得力ある読者の投稿。国内海外からも多い週で一七〇通、打ち出してみると一人平均A4で軽く五枚は超えていた。私はダイナミックなインターネットのコミュニケーションに命がけでのめり込んでいった。

翌年の秋、この連載がきっかけで初めての本が出ることになった。コラムで報告したところ、やまない。「ズーニーさんおめでとう!」「自分のことのように嬉しい!」読者からの骨身に染みる理解がやまない。一通読んで心がふるえ、また一通読んで満たされ、十通、五〇通…と読み進むうちに生まれてこのかた感じたことのない歓びにあふれ、パソコンに突っ伏して泣いてしまった。ネットの顔も見えない人からなぜこんな深い理解が注がれるのか?  

そうか! 一人一人が「自分の頭で考えている」からだ! 

読者の投稿が驚くほど説得力あるのも、ネットの奇跡のような絆が結ばれたのも、全員が書く前にしっかりと「考えて」いるからだ!

小論文編集長をしていたとき、高校生を「書けない」から「書ける」に劇的に変えたのも、「考える」ことだ。

だから、「おとなの小論文教室。」でも、毎週、読者と考えた。私の投げかけに、読者はくらいついてよく考え、自分の想いを自分の言葉で表現して送ってくれた。響き合い、考え合ううちに、えもいわれぬ「ひらけ」に達し、考える習慣がついていった。何より会社員体質が抜けきらなかった私自身が、表現体質へと脱皮できた。かつて会社から与えてもらっていた読者も、いまは表現して自分の手でつかんでいける。新たな居場所もアイデンティティも、表現して自分で築いていける。

現在SNSで瞬時に世界とつながれる時代になっても、日本には「自分をどう表現していいかわからない」という人があふれている。ならば本書で最初の一歩を踏み出そう。本書は十年以上ずっとこう伝え続けている。

「あなたには考える力がある! 表現力がある!」
この記事の中でご紹介した本
おとなの小論文教室。/河出書房新社
おとなの小論文教室。
著 者:山田ズーニー
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
「おとなの小論文教室。」出版社のホームページはこちら
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