ぼくらの七日間戦争 書評|宗田 理(KADOKAWA/角川書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月3日 / 新聞掲載日:2019年8月2日(第3300号)

子どもたちの聖域「解放区」

ぼくらの七日間戦争
著 者:宗田 理
出版社:KADOKAWA/角川書店
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1985年に発表された本作は約250万部発行のベストセラー作品だ。その後約35年間にわたって続く「ぼくらシリーズ」は総計2000万部という超人気シリーズとして多くの人に読み継がれてきた。その名作が今年の12月にアニメ映画化される。実写映画化から30年の時を経て、なぜ今この作品なのか。

物語は中学一年生のクラスの男子ほぼ全員が、夏休みが始まると同時に廃工場に立てこもるところから始まる。身勝手な大人たちからの自由を訴え「解放区」と名付けられたその場所から、子どもたちはFM放送を使って親や教師ら大人たちに宣戦布告をするが、そこにクラスメイトの誘拐事件まで重なってしまう。説得を試みる大人たちを撃退しつつ、自分たちの力で誘拐犯から友達を助け出そうとする子どもたち。クラスの女子の助けを借りて無事友達を救出、捕らえた誘拐犯の気の毒な事情に義憤を感じ、一肌脱いでしまうあたりはなんとも痛快だ。校長や教頭を解放区にこしらえた迷路で返り討ちにしたり、市長や地元権力者たちの汚職を盗聴し中継してしまうなど、エスカレートする子どもたちの振る舞いは遂に警察隊の突入による全面対決を招いてしまい……。

注目すべきは子どもたちそれぞれに活躍の場が与えられていることだ。22人のコミュニティの中で、リーダーシップを発揮し仲間を鼓舞する者、それを脇でサポートするもの。秀才くんは作戦参謀として、腕っぷし自慢はケンカ担当だ。花火師の家に育ったものはその知識を活かし、古舘伊知郎に憧れるプロレスファンはFM放送の実況担当として、それぞれが個性を活かして集団の中で自分の居場所をつくっていく。皆なんといきいきしているんだろう。解放区は、大人に抑圧された彼らの個性を解放してくれる聖域でもあるのだ。

自分らしさを存分に発揮できる場所、そしてそれを認めてくれる仲間の存在は間違いなく自分を成長させてくれる。それと同時に他者を認めることの大切さにも気づく。合わないと思っていた相手の良いところ、苦手に感じ敬遠していた相手の特徴こそが魅力であると気づく。子ども時代のそうした経験があってこそ、その先の豊かな人間関係が築かれるのだ。

最近よく聞く言葉で言えば「承認欲求」ということになるのかもしれないが、この破天荒な物語の中に描かれる少年たちの姿は、携帯やスマホが登場しコミュニケーションの方法が様変わりした現代の子どもたちにも大いなる刺激を与えてくれるに違いない。
この記事の中でご紹介した本
ぼくらの七日間戦争/KADOKAWA/角川書店
ぼくらの七日間戦争
著 者:宗田 理
出版社:KADOKAWA/角川書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「ぼくらの七日間戦争」出版社のホームページはこちら
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