対談=細馬宏通×菊地浩平 ELANで広がる研究の可能性 『ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで』(ひつじ書房)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月9日 / 新聞掲載日:2019年8月9日(第3301号)

対談=細馬宏通×菊地浩平
ELANで広がる研究の可能性
『ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで』(ひつじ書房)刊行を機に

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フリーソフトウェア「ELAN」をご存知だろうか? このELANは音声、動作、視線変化など、複数のできごとの時間変化を、映像と音声波形を見ながらコーディングをして自在に分析できるソフトである。この度、ひつじ書房から『ELAN入門ー言語学・行動学からメディア研究まで』を上梓した編者の細馬宏通、菊地浩平の両氏にELANが研究者にとってどのように使えるソフトなのかを語ってもらった。    (編集部)
第1回
ELANとは何か?

細馬 宏通氏
細馬 
 ひつじ書房から『ELAN入門』を私と菊地さんの編著で刊行しました。そもそもELANとは何か。これはドイツのマックス・プランク心理言語学研究所で言語学者のために開発されたソフトです。早い話が、映像や音声を手がかりに何かを考えたい人のためのソフトです。

もともとぼくがELANを使い始めたのは映像分析をするためでした。分析する時、人間の動作は一度見ただけではわからないので同じ場面を繰り返し見たい。さらに、見るだけではなく、そこで人間が何をしているのかをメモしたい。ずっと以前は人間が動作を始める部分を「○分○秒」といちいちノートに書いてたんですが、これがとても手間のかかる作業で大変でした。ものすごく細かく人の行動を見る研究者にとっては、動画の再生ボタンを押して、止めて、さらにメモをして、という繰り返しが実にわずらわしい。
何とか映像とメモとを結びつける方法がないかと思っていた時に出会ったのがELANです。ELANの基本的な使い方は、動画の気になった範囲をドラッグで指定してメモを書き込めることです。菊地さんはいつ使い始めましたか。
菊地 
 私はELANとはポスドクのときに出会ったのですが、手話会話の研究で使い始めました。その前までは動画を撮り、その映像をいちいち巻き戻しや早送りをしながらノートにメモをしていました。動画はPCで再生できるようになってかなり楽になったとは言え、細馬さんがおっしゃるように大変な作業です。その時に、ELANというソフトがあるよと、研究室で聞いたのが使い始めるきっかけですね。使ってみるととても便利で、それ以来、映像で行動を見て記録するという作業の時は、手話に限らずほぼELANを使うようになりました。
細馬 
 映像を見る時に、一つの出来事だけを注目して終わることはほとんどないんですよね。映像上では一度にたくさんのことが起こっている。たとえば二人の会話場面でそれぞれの視線が気になったら、二人分の視線を記述しなくてはいけない。視線だけでなく、会話の内容や手の動き、姿勢などいくつも記録すべきことがある。それを全部書いていくと音楽のスコアみたいなものになってしまう。実際、こうした研究を始めた頃はいくつもの層になった楽譜みたいなものを方眼紙に書いていました。きれいに書けると自分でもうっとりするんだけれど、いつまでも続かない(笑)。一方、ELANは一つの時刻に対して、いくつもレイヤーを作って、出来事を書くことができます。
菊地 
 あるデータの一定の時間帯に起きていることについて、例えばAさんの視線についてずっと書いても構わないし、それが終われば同じ時間帯のBさんについても書くことができる。ELANだと個別にレイヤーに書き込んでいってもできあがりが自動的にスコア風の一覧性が高いものになるんですね。時間の幅やできごとの長さといったことを表現とは切り離して、どんどん継ぎ足すことができます。私も当時はエクセルで作っていましたが、いつも作りながらこの時刻や時間幅の問題の扱いに困っていました。
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この記事の中でご紹介した本
ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで/ひつじ書房
ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで
編集者:細馬 宏通、菊地 浩平
出版社:ひつじ書房
以下のオンライン書店でご購入できます
「ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで」出版社のホームページはこちら
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