対談=細馬宏通×菊地浩平 ELANで広がる研究の可能性 『ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで』(ひつじ書房)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

読書人紙面掲載 特集
更新日:2019年8月9日 / 新聞掲載日:2019年8月9日(第3301号)

対談=細馬宏通×菊地浩平
ELANで広がる研究の可能性
『ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで』(ひつじ書房)刊行を機に

このエントリーをはてなブックマークに追加
第4回
拡張する新しい研究領域

菊地 
 視線も同じで、視線と一言で言っても、どこを見ているか、どうやって見ているか、或いはどうやって見ていないかがあります。最初に自分で考えていた分類だけでは、現象を説明しきれない。ELANは分析そのものと密接にむすびついた形で作業ができますね。
細馬 
 視線がどこを向いているかというのは、その人の注意がどこに向いているかという問題でもありますよね。注意の方向や対象はどう変化するかというのも、とても身体的ですよね。体をまっすぐにして目玉だけキョロキョロ動かすということは少ない。ある行為をしようとすると視線も体もそこに向く。体がどのような行為を志向しているかということと、視線がどこに向いているかということの間にはとても密接な関係がある。実際、ELANで記述すると、さまざまな動きの変化と視線の変化とはしばしば連動しています。こうした現象を分析していけば、何か行為をしようというときの身体の連携プレイとして、視線を捉え直すことができる。

ELANでは、関心のある要因だけでなく、それと連動している出来事を総合的に分析できるので発見が多いですね。ぼくね、最近、映像を観てる人の行動を調べ始めたんです。映像そのものだけじゃなくて観てる人の記述をするんですが、これがなかなかおもしろいんですよ。

映像を鑑賞している人が複数いれば、映像に対して指さしたり、わあって叫んだり、感想を言い合ったりする。映像の中でさまざまな出来事が起こっている一方で、鑑賞している側の身振りや視線や発声にもさまざまな出来事が起こっている。いわば、映像を介した鑑賞者どうしのコミュニケーションが起こっているわけです。それを統合的に分析する。こういうこともELANを使ってはじめて可能になってきた。
菊地 
 アイトラッカーのような注視点を計測できる装置とELANをあわせるとおもしろい分析がたくさんできると思いますね。
細馬 
 視線が動くというのは時間の流れの中の出来事なので、まさにELANの得意とするところですよね。ELANには、アイトラッカーやセンサーから送られてきた時系列データを読み込む機能があるんです。そのやり方も、この本には書いてあります。じつは日本語でこういうことが書いてある記事ってほとんどないんですよね。
菊地 
 これまでは入門書自体がなかったですからね。
細馬 
 そうですね。ぼくがウェブで公開している「ELAN即席入門」も含めてウェブ上でユーザーが自主的に解説を書いていた。『ELAN入門』はウェブに書いていないことにかなり分量をさいています。
菊地 
 ちょっとずつ仕様が変わってELAN自体も発展途上ですよね。この本の企画自体は二〇一二年からスタートして、当時も使いたい人はいたけれど、今はもっと増えていると思います。
細馬 
 日常的にスマホで動画を撮れる時代ですから、映像分析はこれからますますポピュラーになるだろうし、ELANの活躍の場面はもっと増えると思います。ただELANを使って分析を続けると、人生観が変わったり、人の見方が変わるソフトなので使い方には気をつけた方がいいですね(笑)。

      (おわり)
1 2 3
この記事の中でご紹介した本
ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで/ひつじ書房
ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで
編集者:細馬 宏通、菊地 浩平
出版社:ひつじ書房
以下のオンライン書店でご購入できます
「ELAN入門 言語学・行動学からメディア研究まで」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
読書人紙面掲載 特集のその他の記事
読書人紙面掲載 特集をもっと見る >
学問・人文 > 言語学関連記事
言語学の関連記事をもっと見る >