第五十回大宅壮一ノンフィクション賞 第二十六回松本清張賞 贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2019年8月9日 / 新聞掲載日:2019年8月9日(第3301号)

第五十回大宅壮一ノンフィクション賞 第二十六回松本清張賞 贈呈式

このエントリーをはてなブックマークに追加
大宅賞を受賞した安田氏㊧と河合氏

六月二八日、東京都内にて第五十回大宅壮一ノンフィクション賞と第二十六回松本清張賞の贈呈式が行なわれた。

大宅賞は、河合香織氏の『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(文藝春秋刊)と安田峰俊氏の『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA刊)の二作、松本賞は坂上泉氏『へぼ侍』に贈呈された。

まず、大宅賞の選考委員である森健氏が祝辞を述べた。

「投票して議論を三回繰り返し、それでも決着がつかず二作の受賞になりました。

河合さんの本は出生前診断、命の選別をテーマにしています。答えの無い問いに対する非常に切実な想いが、一行目から最後まで続いている。文章の中に著者の姿勢が現表れている、とても良い本だと思いました。

安田さんの本のタイトルになっている『八九六四』とは、天安門事件が起きた一九八九年六月四日のことです。関係者六十名以上に、あの事件と民主化運動は何だったのかを、しつこく聴いています。この本も著者の姿勢がとても強く出ていて、事件がなぜ起きたのかだけでなく、背景にあった幻影のようなものが明かされていきます。

読み終わった後、心に残る何かを、この二冊は強く宿していると思いました」。

続いて河合さんが登壇した。

「思い返せば、十五年前に最初の本を出してから幾度となく、「そんなテーマはやめるべきだ」という忠告をいただいたように思います。今回も、「このような裁判がことを明らかにするだけで苦しむ人もいる。それをわざわざ取り上げるのはなぜか」という批判や問いもいただきました。

それでも、取り上げてきたテーマについて、タブーだと思ったことはございません。命に向き合ってきた人々の想いに耳を傾けていくうち、誰に何と言われようと、書いていこうと思いました。

大きな賞をいただき、多くの読者の方に手にとってもらえるとは、想像もしていなかったので、驚きとともに感謝の思いでいっぱいです。明日からまた、「やめなさい」と言われるかもしれません。でも信じるテーマに向かって、地道な取材をしていきたい。本当にありがとうございました」。

安田氏は以下のように語った。

「大きな事件、世界史の教科書に「太文字」で書かれる出来事は、後世になるほど紋切り型で語られるようになります。しかし、現場には変わった話、人間くさい話がたくさんある。この本を書いた元々の動機は、その辺にあります。仕事柄、色んな地域に行く機会があり、空き時間を見つけては話を聴いていくうちに、本になったという次第です。「太文字」になる事件を建前どおりに評価するのが嫌なんですね。あちこち出歩いて情報を調べ、別な視点で再構成するのが非常に面白い。

ただ、天安門事件の場合、たくさんの犠牲者や、深い傷を負われた方がいる。そうした方々に向き合うために、誠実性を忘れず、今後も取材を続けていきたい。ありがとうございました」。

松本賞については、選考委員である角田光代さんが祝辞を述べた。

「この小説は、時代の移り変わりと、そう簡単には変わらない人間の愚かさが、西南戦争の時代を背景にして、少年の目を通し、静かに仄かなユーモアを持って描かれています。そして、戦争で様々な経験をした彼は、分かり合えない他者と衝突したとき、大事なのは武術ではなく「説得」だと見出します。

戦争の中身を深く描いていないのは、筆力不足ではなく、「戦争とは何が起こっているのか、本当のところは分からないもの」という作者の意思表明だと思いました」。

最後に、坂上氏が受賞の言葉を語った。
松本賞を受賞した坂上氏
「平成から令和へ時代が変わった感覚は私にはありませんが、この小説は幕末から明治という稀にみる激動の時代が舞台です。新しい時代を迎えるにあたり、負け組と言われる人たちが出てきた。彼らがどういう会話をし、なぜ戦場に赴き、どのように散っていったのか。また、その後の人生をいかに歩んだのか。歴史を学ぶ上で気になっていたことと、大学の講義で大阪の剣客集団が政府軍として従軍している話を聞いたことを思い出し、書きました。

このような名誉ある賞をいただき、非常に嬉しい限りです。本当にありがとうございました」。
この記事の中でご紹介した本
選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子/文藝春秋
選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子
著 者:河合 香織
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
八九六四 「天安門事件」は再び起きる/KADOKAWA
八九六四 「天安門事件」は再び起きる
著 者:安田 峰俊
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
「八九六四 「天安門事件」は再び起きる」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
河合 香織 氏の関連記事
安田 峰俊 氏の関連記事
受賞のその他の記事
受賞
野間四賞決定
受賞をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究関連記事
受賞
野間四賞決定
評論・文学研究の関連記事をもっと見る >