小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集 書評|桜庭 一樹(集英社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年8月10日 / 新聞掲載日:2019年8月9日(第3301号)

小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集 書評
本について書くことが、自身を語ること
「一粒の砂金」の見つけ方をさらりと明かす

小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集
著 者:桜庭 一樹
出版社:集英社
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 実に面白かった。読み始めたら止まらず一気に読んでしまったほどだ。巻末の初出を見ると二〇〇五年のものがあるから、書き下しまで一四年の開きがある。一気に読むのはもったいないような気もするけれど、紹介されている本には未読のものも少なくなく、しかもどれも面白そうだから、読んだあとにもう一度ページをめくることになるだろう。

『赤朽葉家の伝説』『私の男』『じごくゆきっ』などの小説家、桜庭一樹の第一書評集である。桜庭は読書家として知られていて、すでに読書日記が五冊出ている。ただし、最後の巻が二〇一二年なので、本についてたっぷり書いてくれている本書は久々で嬉しい。書評のほか、二〇〇七年から一年間、週刊誌に月イチで連載された読書日記も収録され、道尾秀介、冲方丁、綿矢りさ、辻村深月との対談が収録されている。目次をあらためて見ると、書評集という響きから連想する整然としたたたずまいとは趣が異なる。だが、ノンストップで読めたのはすべてが本にまつわることだから。しかも、この作家の場合、本について書くことが、自身を語ることでもあるらしく、人となりや作家としての姿勢がうかがえる仕組みになっている。たとえば若林正恭のキューバ紀行『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』について書くうち、自身の小説の核となる「一粒の砂金」をどんな作業を重ねて見つけ出すのかをさらりと明かしている。「創作の秘密を教えてください」などというインタビュアーの質問からは出てこない貴重な一言がこぼれ落ちるのだ。

取り上げられている本は海外作品が多い(だから未読の本がたくさんあったのだ。読まねば)。最近の本から、ヴァージニア・ウルフやエラリー・クイーンのような古典もあり幅広い。時代も場所もあっさりと越えてしまうのも小説の良さなのだから、その融通無碍な本の乱れ打ちも実に楽しかった。

また、読書が桜庭一樹という作家の血となり肉となり、その創作の源泉となっているらしいことがわかるのも本書の面白さだ。最初に取り上げられている倉橋由美子の『聖少女』評は、もしかするとこの作品が『私の男』に大きな影響を与えたのだろうかと思わせる。小学校高学年の頃から愛読しているというシャーロック・ホームズについて熱く語った書評では、もしも「あのホームズが女の子だったら、はたしてどんな物語になるのだろう……?」と考えながら書いたのが『GOSICK―ゴシック―』シリーズだと明かしている(あの美少女探偵ヴィクトリカが! たしかに納得できる)。気がつくと彼女が論じる小説作品と桜庭作品の隠されたつながりを探している自分に気づいた。十四年という時間の長さも効いていて、「まったく旅には興味がない」と書いていたのに、後半では一人旅を楽しむようになっている。その変化もやがて創作に生かされるのだろうかと考えると、桜庭一樹の新作がますます楽しみになってきた。
この記事の中でご紹介した本
小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集/集英社
小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集
著 者:桜庭 一樹
出版社:集英社
以下のオンライン書店でご購入できます
「小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集」出版社のホームページはこちら
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