アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日 書評|小俣 直彦(こぶな書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年8月17日 / 新聞掲載日:2019年8月16日(第3302号)

アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日 書評
難民を知ることで日本を知る
精一杯生きる人たちの「生」が伝わってくる

アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日
著 者:小俣 直彦
出版社:こぶな書店
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 「難民キャンプはテント」のイメージはすぐ崩れた。二〇〇一年、評者が訪れたパキスタンのキャンプは土づくりの家の集落だった。9・11で米国がアフガン攻撃を始めた時期、JICA(国際協力機構)広報誌の取材。ペシャワール難民キャンプは巨大な村だった。

著者小俣が訪れたのは、アフリカ・ガーナのリベリア難民のブジュブラム・キャンプ。当時、ロンドン大学院生で経済調査に一年一カ月住み込んだ。アフリカ大陸の左に張り出した地域が西アフリカでリベリアは南西の角、その東に一国挟んでガーナ。リベリアは米国が解放黒人奴隷を入植させ一八四七年に建国した。先住民と入植者の争いから一九八九年に起こった内戦は一四年続き、三〇万人以上死亡し二〇万人難民が発生。当時、ブジュブラムには二万人が生活していた。

著者はそこで出会った人々や生活を淡々と描く。二〇年間でさまざまな職業が発生している。例えばITコンサルタント⁉

難民キャンプのインターネットカフェには長蛇の列ができ、Facebookで友人づくりに精を出す。その援助による移住が目的だ。そこでやり方を教えるコンサルタントが生まれる。実際にSNSで結婚し欧米に住む成功者もいる。だから知らない外国人の「友達」申請が来るのだ!

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によれば難民の解決策には本国帰還、避難先定住と第三国定住の三つがある。彼らは米国など第三国定住を目指し、小俣もその支援を求める声に悩まされることになる。

キャンプにはセックスワーカーもいる。シングルマザーで、ガーナの首都アクロで仕事をするときは、仲間が子どもの面倒をみる互助システム。半グレ集団も互助生活。一番多い仕事は水売りとフルーツ売りで収入はごくわずかだが、使った水パックを拾って売る人もいる。仕事がない人は親類縁者の海外送金に頼るが、収入のない他人の家族を養う互助の精神。このように、現地で難民の経済生活を調査した小俣だからこそ描けた内容には驚くばかりだ。

民族対立を背景にLRWC(難民福祉協会)へ不信がつのり政治運動となるが、ガーナ当局に鎮圧される。本国帰還は理想だが、第二世代は母国より生活した土地の愛着のほうが強い。しかし避難先国は定住を喜ばない。リベリアは政情が安定しUNHCRも支援を打ち切る方向だ。

難民は欧州に押し寄せるイメージだが、九割は近隣途上国に住み、二五〇〇万人。国内避難民を合わせると六八五〇万人が不安定な生活を強いられている。

難民や移民・移住問題は人ごとではない。年数十人という日本の難民受入れの少なさと入管問題。ブラックな研修生制度。韓国からの強制移住労働と在日問題や中国残留孤児。帰国した日系人二世三世。3・11の避難所や国内移住数万人。

中国残留孤児は向こうで日本人、こちらで中国人と差別されたが、難民の本国帰還も同様だろう。本書で述べられた、もはや戻れない「帰還不能点(The Point of No Return)」とはフクシマ帰還でも同じではないだろうか。

難民生活は悲惨である。だが日本人が毎年三万人自殺すると聞いた現地スタッフは言う。「自殺するヤツなんてここにはいない。(中略)皆、心底〝生きたい〟と思っている連中ばかりだよ」 本書からはそんな精一杯生きる人たちの「生」が伝わってくる。「難民は関係ない」と思っている読者こそ目から鱗、私たちと同じ問題をいくつも見出すことは間違いない。
この記事の中でご紹介した本
アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日/こぶな書店
アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日
著 者:小俣 直彦
出版社:こぶな書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日」出版社のホームページはこちら
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