古谷田奈月インタビュー それをいつ受け入れたのか? 古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月16日 / 新聞掲載日:2019年8月16日(第3302号)

古谷田奈月インタビュー
それをいつ受け入れたのか?
古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)

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一作ごとに注目を集める新世代作家、古谷田奈月さんの最新作『神前酔狂宴』が河出書房新社から刊行された。本作は神社に併設された結婚披露宴会場を舞台に、そこで働く主人公・浜野を通して、結婚、家族、日本という虚妄を撃つ意欲作。物語は結婚披露宴の狂乱から幕を開ける。明治の英雄・高堂伊太郎を祀る神社の結婚披露宴会場・高堂会館に派遣された十八歳の浜野は同僚の梶と時給アップを競い合いつつ、結婚披露宴という茶番を演じるうち、日本の壮大な空虚に目覚めていく。本書の刊行を機に、著者の古谷田奈月さんにお話を伺った。また、同時掲載の「二〇一九夏の文藝夜話」レポートでは、今年上半期の文芸の流れの中で本作にも触れている。併せてお読みいただきたい。        (編集部)
第1回
現代社会と神道との結びつき

古谷田 奈月氏
――本作は、リニューアル初号の『文藝 夏季号 特集:天皇・平成・文学』に一挙掲載され、各紙文芸時評でも取り上げられて反響を呼びました。本作では神社の婚礼会館を舞台に、そこで働きはじめた主人公・浜野の眼に映る現代日本の空虚が軽やかに描き出されます。まずは本書執筆の経緯からお伺いできますか?
古谷田 
 最初は編集者の方から「今度の『文藝』リニューアル号を天皇というテーマで特集するので、そこに何か書いていただけませんか」と言われたのがきっかけでした。でもそのときは特に何も思い付かなかったし、ほかの執筆依頼もあったのでその場でお断りしたんです。ところがあとになって、自分がいま書こうとしているものがまさにそのテーマに合致すると気が付いて、結局書かせてもらうことになりました。

――今回の作品には神社に併設する婚礼会館で繰り広げられる結婚披露宴の虚飾のようなことが前面に出ていますが、実はその背後には震災、非正規雇用、移民労働のようなたくさんの事象や社会問題があり、その奥には天皇制、近代といった現在の日本を支える信仰のようなもの、大きな空虚があると思ったのですが、書き出す最初の手がかり、中心となるテーマはどういうことだったのでしょうか?
古谷田 
 書こうと思ったのは、私が長年感じていたある疑問からでした。この小説に書かれていることはほとんどすべて創作ですが、実は私はデビュー前、某神社の某会館で十年ほどアルバイトしていた経験があるんです。そのときの規則の一つに、拝殿の前での一礼がありました。神社で働いているから、祀られている神様を敬うわけですが、その一礼を繰り返しているうちにだんだん疑問が募ってきた。私はいま何に対して頭を下げているのか。何を敬っているのか。そしてそれを自分の意思ではなく指示されてやっているこの状況はなんなのか。身体的に礼儀を強いられ続けてきたせいで、その謎に気付かないふりをすることができなかったんです。そのときの違和感が、いまの右傾化しているといわれる現代社会と結びつき、よみがえってきたという感じです。
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この記事の中でご紹介した本
神前酔狂宴/河出書房新社
神前酔狂宴
著 者:古谷田 奈月
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
無限の玄/風下の朱/筑摩書房
無限の玄/風下の朱
著 者:古谷田 奈月
出版社:筑摩書房
以下のオンライン書店でご購入できます
リリース/光文社
リリース
著 者:古谷田 奈月
出版社:光文社
以下のオンライン書店でご購入できます
「リリース」出版社のホームページはこちら
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