古谷田奈月インタビュー それをいつ受け入れたのか? 古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月16日 / 新聞掲載日:2019年8月16日(第3302号)

古谷田奈月インタビュー
それをいつ受け入れたのか?
古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)

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第2回
現代人の拠り所のなさ/パートナーのかたち

古谷田 奈月氏
――そういうご自身の体験、疑問が本作の核にあったわけですね。そして物語としての本作には主人公の浜野、同期の梶、椚会館の倉地という三人を中心とした友情や葛藤が太いストーリーとして走っていて、それが本作を読み進める推進力になっています。登場人物の配置には意図された対立構造があるように感じましたが、人物造形や人間関係の設定はどのように考えられたのでしょうか?
古谷田 
 最初にイメージとしてあったのは、思想の異なる二つの神社です。対立するそれぞれの神社に属する若者たちの交流を通して、彼らの変化や個としてのあり方を描いていこうと思っていたのですが、その穏やかな見通しは書いているうちに変更、変更でどんどん塗り替えられていきました。

――たとえば最初は一対一の人物だったとか?
古谷田 
 いえ、中心人物は最初から三人の設定で、そのうちの二人は強く自分というものを持っていて、一人は揺れ動く人にしようと。その設定はわりと残っていて、主人公の同期の梶がその揺れ動く人ですね。彼について書きたかったのは、その拠り所のなさです。両親という本当は一番頼りたかった人たちと縁が薄く、自分を気にかけてくれる唯一の存在であるおばあちゃんに入れ込んでいる。たった一つ確かなものが欲しい、そういう思いが彼は顕著だけれども、それはきっと誰にでもあると同時にナショナリズムにも通じていくところだと思います。逆に浜野みたいな人は、最初から家族という本拠地も経済的基盤もしっかりあるから、そういうこだわりに鈍感でいられる。

――椚会館で働く倉地は、同い年の三人の中で唯一女性であり、浜野とライバル関係に育っていくわけですが、彼女の人物像というのはご自身の投影とか、あるいはモデルになるような人物からキャラクターを取っているところもあるのでしょうか。
古谷田 
 モデルはいません。私自身からも一番遠いかなと思います(笑)。

――そうですか(笑)。その人物的な流れで聞いていきますが、浜野と梶の先輩にあたる汐見と入江は浜野と梶のように同期で仕事の上でもプライベートでも男女のパートナーで、対する浜野と梶は同期で男性同士のパートナーです。登場人物たちの相関図の中でいろいろな形のパートナーが出てきます。
古谷田 
 この小説は結婚がテーマの一つでもありますが、ひとことでパートナーといってもそのかたちは様々です。それこそ夫婦というパートナーもあれば、相棒とか親友同士みたいなパートナーもある。入江と汐見のような、仕事の面でもセックスの面でも繋がりがあるというかたちもある。そういう多種多様で混沌とした状態を描きたかったんです。ほかにも、たとえば梶は倉地に恋心を抱くんだけれど、最終的には、彼女は自分にとってたった一人の友だちなんだというふうになる。「友だち」というものが、恋人とか夫婦というところを超えた価値観でそのとき語られる。その一方で、二つの神社のそれぞれに祀られている高堂伊太郎と椚萬蔵という人たちの、本当にあったかどうかわからない、非常に美化されている可能性の高い相棒関係というのもある。実際のところパートナー関係を築くことは可能なのか、本当は誰しも一人なのではないかという疑問も含め、色々なパートナー関係を描いてみようと思いました。
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この記事の中でご紹介した本
神前酔狂宴/河出書房新社
神前酔狂宴
著 者:古谷田 奈月
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
無限の玄/風下の朱/筑摩書房
無限の玄/風下の朱
著 者:古谷田 奈月
出版社:筑摩書房
以下のオンライン書店でご購入できます
リリース/光文社
リリース
著 者:古谷田 奈月
出版社:光文社
以下のオンライン書店でご購入できます
「リリース」出版社のホームページはこちら
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