古谷田奈月インタビュー それをいつ受け入れたのか? 古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月16日 / 新聞掲載日:2019年8月16日(第3302号)

古谷田奈月インタビュー
それをいつ受け入れたのか?
古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)

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第4回
浜野のシナリオ/家族という呪い

古谷田 奈月氏
――気になったのは浜野の書いているシナリオなのですが、浜野は「自分は書いているだけでいい。ぺラとペン一本があれば生きていける」と言い切っていますね。誰に認められなくても、自分を自分たらしめる拠り所として脚本を書き続ける。それは、彼のお姉さんから見れば、誰にも見せない、評価されない脚本を書き続けているなんて空虚に見える。その彼が書き続けているシナリオというのがどうなっていくのか気になりながら読んでいました。
古谷田 
 彼の特殊性は人に見せずに書く、人に認められずに書き続けられるということで、それがすごいことだなと、自分がモノを作る身としては思います。でも、書いているときの充足感は半端じゃないというのもまた事実なので、その充足感だけで生きていくこともあるいはできるんじゃないか、そういう創作者がいてほしいという願いもあります。浜野のような人、つまり目の前で起きていることの滑稽さを見抜いてそれで遊ぶみたいな感覚を持てる人にとっては、他者からの承認がなくても生きていけるんじゃないかと。

――作中でも、目の前で起きていることより、頭の中で起きていることのほうが好きだったという浜野に「こうしたまま生き続けるのは可能だろうか」と言わせていますが、そういう生き方は挑戦でもある。浜野が地元の松本を舞台に書き始めたと語るシナリオの「城」では、超高齢化社会が到来した未来の松本で、ある日突然、城から意思の力を感じる主人公が登場します。その城を愛するようになった男と城との運命が描かれますが、浜野は結局最後のオチを茶化しているような感じも受けると同時に、「城」に象徴されるものについて考えさせられます。
古谷田 
 「城」のシナリオの最後の部分は、昔から残っているもの、伝統あるものに対する主人公の態度の表れで、彼の一貫した価値観です。神社に対してもそうだし、松本城のような歴史的建造物に対してもそう。

――その浜野の実際の家族は、物語の終盤でクローズアップされてきます。最後まで電話越しにしか登場しない姉は、シェイクスピア劇に出てくる荒野の魔女のようだと思いました。浜野に実家の縛りという呪いを吐き続ける。
古谷田 
 最初の方で梶の拠り所のなさについてお話ししましたが、浜野は梶と違って実家が安定しています。でも安定した家なら呪いがないかといったら、全くそんなことはない。それも書きたかったことの一つです。家族といっても一人ひとり全然違うし、家族の中でもそれぞれの関係というのがありますよね。浜野にしても、おそらく母親と一番感覚が近いというか、距離を保ってくれるがゆえに感じる親近感というのはあると思うんです。完全に放っておくわけでもないけれども、父親や姉たちのように構ってもこない。そういう間合いのとり方だとか、あと会話の感じっていうのは、家族間でも相性の善し悪しがかなりあると思います。
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この記事の中でご紹介した本
神前酔狂宴/河出書房新社
神前酔狂宴
著 者:古谷田 奈月
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
無限の玄/風下の朱/筑摩書房
無限の玄/風下の朱
著 者:古谷田 奈月
出版社:筑摩書房
以下のオンライン書店でご購入できます
リリース/光文社
リリース
著 者:古谷田 奈月
出版社:光文社
以下のオンライン書店でご購入できます
「リリース」出版社のホームページはこちら
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