古谷田奈月インタビュー それをいつ受け入れたのか? 古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月16日 / 新聞掲載日:2019年8月16日(第3302号)

古谷田奈月インタビュー
それをいつ受け入れたのか?
古谷田奈月著『神前酔狂宴』(河出書房新社)

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第6回
「リリース」/「無限の玄」

リリース(古谷田 奈月)光文社
リリース
古谷田 奈月
光文社
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――最後に、本書で古谷田作品とはじめて出会う読者のためにこれまでの作品についても少しお話を伺いたいのですが、二〇一七年に織田作之助賞を受賞された『リリース』(光文社/二〇一八年光文社文庫)はジェンダーに真正面から向き合った作品で、同性愛がマジョリティとなったディストピア的な近未来を描かれましたが、小説の面白さとは別に、生殖倫理の概念が更新され、いわゆる女性らしさ男性らしさが取り払われた世界、ジェンダー概念の揺らぎの中で物語を編むことの困難を感じました。
古谷田 
 『リリース』は、当時ネット上で頻繁に目にしていたフェミニズム的「正しさ」が執筆の動機です。この人たちは正しいことを言っている、この人たちの望む社会が実現したらきっと素晴らしい、そう思うのになぜこんなに違和感があるのか? そういう、自分自身と世間の両方に対する疑いが核になっています。こんなことを書いたらものすごく怒られるかもしれないと内心びくびくしていたのですが、誤解なく読んでもらえたと感じています。

――『早稲田文学増刊 女性号』に掲載された作品で、二〇一八年に三島賞を受賞された「無限の玄」(『無限の玄/風下の朱』筑摩書房)では、生死の境界が揺らぎます。物語には男性だけの音楽家一族が登場し、一家の家長であり禍根の根ともいえる父・玄が死んでいたという場面から始まりますが、その玄が毎日生き返ってきては死んでいく。しかも本も読めばものも食べるという実体として生き返る、というその着想はどこから来るものでしょうか?
古谷田 
 すごく単純な考えなんです。自分の命もどこかから繋がっているという感覚が強いし、その概念を知る前から輪廻転生を感じてもいました。身近な人が亡くなったらもちろん悲しいし、ショックではあるけれど、それで終わりではない。この命はずっと続いていくというのがまず一つ、私の感じ方としてあるんです。

もう一つは、世界にはすごくたくさんの人がいて、一人ひとりこんなに違うんだから、死んでもまた生き返ってしまう人が一人くらいはいるんじゃないかと結構本気で思っている(笑)。あと、何百年も生き続けている人とか、でもその人はたぶん知りすぎている人物として国家として隠さなければならないからどこかに幽閉されているはずだとか(笑)。ですからあの作品は、私の感覚でいえばリアリズム小説なんです。

――本日は幅広くお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

      (おわり)
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この記事の中でご紹介した本
神前酔狂宴/河出書房新社
神前酔狂宴
著 者:古谷田 奈月
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
無限の玄/風下の朱/筑摩書房
無限の玄/風下の朱
著 者:古谷田 奈月
出版社:筑摩書房
以下のオンライン書店でご購入できます
リリース/光文社
リリース
著 者:古谷田 奈月
出版社:光文社
以下のオンライン書店でご購入できます
「リリース」出版社のホームページはこちら
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