第161回 芥川賞・直木賞 決定|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月16日 / 新聞掲載日:2019年8月16日(第3302号)

第161回 芥川賞・直木賞 決定

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左から直木賞の大島真寿美氏、芥川賞の今村夏子氏

7月17日、都内で第161回芥川賞と直木賞の受賞作の発表および、受賞者会見が行われた。受賞作は芥川賞が今村夏子氏の『むらさきのスカートの女』(朝日新聞出版)に、直木賞は大島真寿美氏の『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(集英社)に決定した。

芥川賞選考委員の小川洋子氏は、会見で以下のように評した。
「選考会では、ピントが外れた奇妙な世界を描けるのは、今村さんだけであるという意見が出ました。常軌を逸した人間、その本人を語り手にするのは非常に難しいことです。実在するのか、妄想の中だけにいるのか分からない、むらさきのスカートの女を鏡にしながら、そこに写る語り手の「私」を描いていくことで、「私」の本性に迫っていく。そういう構造が非常に成功しています。

結局、このむらさきのスカートの女は実在するのかどうか。本当に二人の人間なのか、実は二人で一人なのか。選考委員によって読み方が別れ、面白い議論となりました。その議論が作品の評価を落す方ではなく、高める方へ向かい、選考委員全員がこの作品はやはり面白いという気持ちになりました。今村さんは、狂気を突き抜けた先にある哀れさを描ける人だと、今回の作品で再認識できました」。

続いて、直木賞選考委員の桐野夏生氏は次のように語った。
「軽妙で柔らかな大阪弁の語り口により、いつの間にか読者も〝渦〟の中に分け入るような感覚になる作品です。大島さんの実力のほどが伺える作品だったと思います。一番評価されたのは、人形浄瑠璃の作者・近松半二の虚実をめぐる戦いがリアルに描かれているということでした。フィクションという虚を書いていると、リアルな自分の人生が虚ろになる。そこで起きる反転現象が、非常に上手く書けていました。候補者が全員女性だったことについては、偶然だったと思いますし、今回は女性作家の実力がそれだけ高かった。むしろ、あまり騒がれない、別に珍しい事ではない、という風になればいいと思います」。
受賞者の会見で、今村氏は以下のように想いを述べた。
「大変驚きました。私には手の届かない、一生とれないものだと思っていたので、受賞できて本当に嬉しいです。今回の作品は、自分らしいものが書けたという想いはありました。あまり無理をしない、身の丈にあったものが書けた気がします。色々な読み方をしてもらえたことは、大変ありがたく思っています。書くのはすごく辛いですし、嫌だなと思う時期の方が長いですが、集中して書くのが楽しいから書き続けられたのだと思います。デビューした九年前のころと比べると、開き直ることができたというか、失敗してもいいと思えるようになりました。これからも頑張っていこうと思います」。
大島氏は、受賞の感想を次のように語った。
「びっくりしていて、あまり実感がありません。語り口に関しては、あまり苦労せずに書けたのですが、完全に関西弁になると読みにくいので、バランスをとることだけは注意していました。『妹背山婦女庭訓』を書こうと思った先に、文楽があり、浄瑠璃があり、近松半二がいた。今までも、ただ淡々と書いてきたので、これからも淡々と書き続けていきたいです。今できることをやっていけたらと思っています」。
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