【横尾 忠則】難聴は時には便利がいい。夢はコラージュ。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年8月19日 / 新聞掲載日:2019年8月16日(第3302号)

難聴は時には便利がいい。夢はコラージュ。

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西太后
2019.8.5
暑い。京都38度。外国人観光客「火山みたい」と言ってへたばっている。インドで40度を経験しているけれど、湿気がないので、コンガリ焼けて気分爽快。

午後、カメラマンの上野さんが来てくれて、旧作に加筆した150号3点の複写。

夕方、NYからのジョン・ジェイさんの招きで滝沢直己さんと目黒のHIGASHI-YAMA Tokyoへ。店の看板もなく、入口がさっぱりわからない複雑な構造のレストラン。こんな秘密めいた店、と思ったが、帰る頃は満席。ファッション・ピープルの隠れ家? ジョンさんはニューヨークのアートシーンの顔役的存在? ぼくの知っているアメリカ人のほぼ全員を知っている。誰がぼくの作品を持っているかさえ情報通。帰りに滝沢さんが彼の新作ジャケットをプレゼントしてくれる。
2019.8.6
 集英社新書の編集長伊藤直樹さんと文宙社の高木真明さん来訪。何か語り下しの新書を出したいと。芸術に於ける異界的な本はどうかと打診。

あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」の実行委員会と、別に津田大介さんより、それぞれの立場からの長文の説明文が送られてくる。客観的というより両者とも主観的な内容。
2019.8.7
 イッセイミヤケのパリコレの新しいデザイナー近藤悟史さんらが来春夏の新作のコンセプトの説明に。前回の宮前義之さんは材質主流だったが、近藤さんはフォルム主体のデザイナーのようだ。若いデザイナーと仕事するのは健康の素。

夜になって特報的に小泉進次郎さんと滝川クリステルさんの結婚発表にド肝を抜かれる。だって、ついこの間、たて続けに2回も滝川さんがアトリエに来たばかりで、そんな様子はミジンもなかっただけにびっくり。また来ます、と言ったけれど、こんな状況じゃ外出もままならないんじゃない?
2019.8.8
 午後、「アトリエ会議」で保坂和志さん、磯﨑憲一郎さんと朝日新聞のデジタル版「好書好日」の編集長野波健祐さんと中村真理子さん来訪。『文藝』から朝日のネットに転生した〈アトリエ会議〉のアクセスが随分多いという。テーマなしの放談会。保坂さんがどこからか探してきた西太后の顔がぼくにそっくりの写真であることが話題になる。こんな日常茶飯事な話題が毎回、座談のテーマになるのでおしてしるべしでしょ。3人での鼎談は、相手2人が話している間はさっぱり聞こえないので、この間、口と耳が休めるので楽ちん。時々、「何の話をしているの?」と聞くと、保坂さんはいつもホワイトボードに話の内容を書いて教えてくれる。2人の間の話が面白ければ加わるけれど、まあ、そこそこの話だったら、しばらく沈黙する。まあ、どっちにしても大した話をしているわけではない。難聴は時には便利がいい。
2019.8.9
 手の親指が痛いので絵は描けないと思う。無理すれば描けるかも知れないけれど、手を休める必要がある。文章は力を必要としないのでかろうじて書けるがミミズのはったような字しか書けない。文字がしっかり書けないと、内容までミミズのような内容になる。絵はミミズがはったような筆致でも逆に誰にも似ていない作風になるから、ケガの功名と喜べる。

夕方から『文學界』の連載「原郷の森」を書き始める。作家じゃないから文体を吟味することもなく、頭に浮かぶ言葉をただダラダラと並べるだけだから、話すつもりで書ける。ほぼ30枚書く。保坂さんに言わせると、ぼくのこういう文章は新人賞などに応募すると落ちるというが、誰かと競うためとか文学に挑戦しているわけではないので、気が楽だ。
2019.8.10
今日、神戸屋に行くと、今までいた顔見知りの従業員がほとんどいなくなっていた。従業員といってもバイトなのかも知れない。

このところ毎日野良がふたり連れできていたのが2日前から姿を見せなくなった。エサも残したりする。野良のふたり連れというのはお互いに、どこへ行くのも相談しながら行動しているように思う。でないとふたり連れで行動する必然性がないでしょう。
2019.8.11
 〈糸井重里サント東京ノ繁華街ヲ歩キナガラ、知人ノオフィスデ念写ヲスルコトニナッテイル。二人共、念写を成功サセテイルガ、夕方カラボクノ郷里ニナゼカ住ンデイルカメラマンノ倉橋正君ノ家ニ招カレテイルノデ、糸井サント車デ向ウ〉。夢では東京と西脇が地続きになっている。夢はもともとコラージュである。

午前中アルプスへ。隣りの二人組の女性のひとりは友達を無視してスマホに夢中。

増田屋でそばを食べたあと、久々に旧山田邸でお茶を飲みながら、小説「原郷の森」の3回目を仕上げた。

夕方、散歩中の磯﨑さんに会う。一日も休まないで年中歩いている。若いのにエライ。

野良のシマ模様がふたり組がバラけて、ひとり組になって帰宅を待っていた。(よこお・ただのり=美術家)
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