東浩紀ロングインタビュー(聞き手=長瀬海) ユートピアと加害の記憶 ゲンロン叢書03『テーマパーク化する地球 』(ゲンロン)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月23日 / 新聞掲載日:2019年8月23日(第3302号)

東浩紀ロングインタビュー(聞き手=長瀬海)
ユートピアと加害の記憶
ゲンロン叢書03『テーマパーク化する地球 』(ゲンロン)

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批評家にして哲学者、作家、そして経営者として思索と実践を積み重ねてきた東浩紀氏。このたびゲンロンの人文書シリーズ「ゲンロン叢書」の第三弾として、東浩紀著『テーマパーク化する地球』が刊行された。本書は、東日本大震災以降に執筆された論稿から四七点を選び、「世界のテーマパーク化」「慰霊と記憶」「批評の役割」というテーマのもと再構成された評論集である。あとがきによれば、本書は東氏の「四〇代の経験が詰まった評論集でもある」という。本書の刊行及び雑誌『ゲンロン』第二期創刊号である『ゲンロン10』の刊行を前に、東浩紀氏にお話を伺った。聞き手はライターの長瀬海氏。(編集部)
第1回
新しい文体を発明していくこと

東 浩紀氏
――『テーマパーク化する地球』(ゲンロン)を本当に面白く読んだのですが、まず驚くのが読みやすさでした。エッセイのお手本のような評論集だと思いました。中身に入っていく前に東浩紀さんのエクリチュールの問題についてお伺いしたいのですが、いわゆる思想系の若手が使いがちなジャーゴンが一切使われていないにもかかわらず、東さんの思弁的な部分というのがよくあらわれています。たとえば『現代思想』に載っていそうなジャーゴンを使いまくった文章も東さんは書こうと思えば書ける。でもそれをせずに平易な言葉で読ませるというのが東さんの文章の特徴だと思いました。
東 
 難しい言葉を使っている人たちも、構造的に取り出せば大したことは言っていない。人間は頭で考えるときに、そんなに専門用語を使っているわけではない。小難しい言葉をやたらと使う現代思想や批評の文体というのは、要は読者を限定するために使われているんです。そういう文章では届く人は限られているので、僕としてはしたくない。つまり、想定読者が違うということだと思います。『現代思想』や『ユリイカ』さんは、想定読者として研究者や大学院生を念頭に置いているのだと思います。その人たちには、難しい言葉を使ったり註をたくさん付けてアピールしないと読んでもらえない。でも自分の本は、決してアカデミズムの狭い世界で閉じたものにしたくない。実際、読者には会社員の方が少なくありません。だから、今回の本は読みやすくしました。あまり歯ごたえがないように感じる人もいるかもしれませんが、僕としてはそういう人には逆に読んでもらえなくていいかなと思っています。

――それはいつ頃から、そう思うようになったのでしょうか。
東 
 ゲンロンという会社を運営し、大学関係者だけでなくいろいろな人たちに会う中で自然にそうなっていった感じですね。これは、哲学や批評って誰のものなんだという問題でもあります。哲学や批評の本来的な在り方を僕なりに考えてみるうちに、難しい言葉を使ってそれらを自分たちのものにしている人々とは相容れないことに気づいたんです。

今回の本は、メルマガとかいろんなところに書いた文章を集めたものですが、すべていちど書き直しているので文体は統一されています。今の僕の基準で綺麗に分かりやすく読めるように手を入れている。逆にこうやって読み返すと、『ゆるく考える』(河出書房新社)の第二章——十年くらい前の『文學界』の連載をまとめたもの——と現在では、僕自身が思考だけでなく文体レベルで大きく変わっていることがわかります。文章については、自分ではうまくなっていると感じています。ゲンロンの仕事では、自分の評論というよりも巻頭言や紹介を書くことばかりしていたので、そこで鍛えられたところもあると思います。これは最近よく言っていることなのですが、哲学をやるということは新しい文体を発明することでもある。それを意識的に実践していったら、現在のような文章にたどり着きました。

――「ゲンロンβ」VOL・38でも、哲学の中に閉じこもらない文体、新しい文体をこれからは作っていかなきゃならないんだということを仰っていました。
東 
 その試みについては、とくに、これから出る『ゲンロン10』に寄せた巻頭論文を読んでいただけば分かると思います。僕がこれから、どういう文体で何をテーマとして扱おうとしているのかが、はっきり分かると思います。『テーマパーク化する地球』は、新しいステージのための準備のような本です。
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この記事の中でご紹介した本
テーマパーク化する地球/株式会社ゲンロン
テーマパーク化する地球
著 者:2157
出版社:株式会社ゲンロン
以下のオンライン書店でご購入できます
「テーマパーク化する地球」出版社のホームページはこちら
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