鼎談=山本勉×山下裕二×橋本麻里 文化財保護法施行65周年記念出版『国宝事典 第四版』(便利堂)刊行を機に 一千件を超える「国宝」を俯瞰するために|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
更新日:2019年8月23日 / 新聞掲載日:2019年8月23日(第3303号)

鼎談=山本勉×山下裕二×橋本麻里
文化財保護法施行65周年記念出版『国宝事典 第四版』(便利堂)刊行を機に
一千件を超える「国宝」を俯瞰するために

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便利堂から文化財保護法施行六十五周年記念出版として『国宝事典 第四版』が刊行された。昭和三十六年の『第一版』、そして『第三版』からは約四十年ぶりの改訂となる本書。国宝全一一一五件が網羅された一冊となる。この刊行を機に山本勉、山下裕二、橋本麻里の三氏に鼎談をお願いした。(編集部)
目 次

第1回
約四十年ぶりに改訂された『国宝事典』

橋本 麻里氏
橋本 
 便利堂から『国宝事典 第四版』が刊行されました。『第三版』から約四十年ぶりの改訂となります。お二人がご覧になった本の第一印象はいかがですか。
山下 
 僕が推薦文を引き受けた時にまず驚いたのは、こんなにも改訂されていなかったのかということです。
山本 
 それは同じです(笑)。
山下 
 もう令和ですよ(笑)。平成のうちには一度も改訂されなかった。『第三版』はもちろん便利な本だったけれどモノクロでした。それがカラーになって、さすがに時の流れを感じますね。『第三版』は大学の研究室にありましたし、私もたまに見ていました。
山本 
 私は知ってはいましたが使っていませんでした。と言うのも国宝について学生の頃は少し馬鹿にしていたところがありました。その後に色々と気持ちも変化して国宝のありがたみがわかるようになった(笑)。私の師である水野敬三郎先生も昔は否定的なところがありました。研究対象を国家が管理するのはけしからんと。水野先生と当時の文化庁は一緒に仕事をしているけれど決して一体ではなかった。でも水野先生もその後文化審議会の委員をされましたし私も現在そうです。
山下 
 国宝に対する異議申し立てについて言えば、僕はずっとそれでした(笑)。『未来の国宝・MY国宝』(小学館、二〇一九年)にはそういったことを書いています。二〇〇二年の「没後五〇〇年 特別展 雪舟」の時に、〈慧可断臂図〉がなぜ国宝ではないのか騒ぎ立てた。その後二〇〇四年に国宝指定されましたけれどね。でも改めて考えてみると、国宝という制度があることによって僕のように異議申し立てができるから鏡のような役割はしている気がしますね。
山本 
 山下さんの専門である絵画にしても、日本の古い時代の絵画から順に国宝に指定されているでしょう。ところが近現代になれば国宝指定はされていない。カバーしきれていないのか、そもそもどこまでカバーする必要があるのか、そこも議論になる。
山下 
 古いから、という価値基準が全般にありますよね。山本さんは審議員をされているならば、新しい時代にも基準を広げていこうという機運があるんですか。
山本 
 例えば絵画の国宝指定をする際には絵画彫刻部会で審議します。私もそこに所属しています。それから工芸や建築もそれぞれ部会があります。不思議な伝統として絵画と彫刻が一緒になっています。だから彫刻専門の私も絵画を審議します。正直に言うと、近世の絵画などではこれが重要文化財なのか? と思うような作品もありますね。
橋本 
 読者に説明すると、山下さんも推薦文に書かれていますが、「重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定する」というのが昭和二十五年に施行された文化財保護法での規定です。
山下 
 だからいきなり国宝というケースは今までにはない。
山本 
 近世や近代や現代のもので「たぐいない国民の宝たるもの」というイメージがぴったりくるものがあるのでしょうか。
山下 
 僕は近代のものでもこれから国宝にしてほしいものはたくさんありますね。五十年後、百年後にはそう言えるものもあると思います。例えば百年後には漫画の原画は国宝になってもおかしくないですよ。或いは絵画の国宝指定で制作年代が最も新しいものは江戸時代の〈鷹見泉石像〉(渡辺崋山筆)です(二〇一九年七月現在)。江戸時代の絵画でも国宝指定すべきものはまだまだある。
橋本 
 現在の文化財保護法が制定された後、初めの頃には審議員の恣意的な指定が行われていたこともありました。だから時代的やジャンル的に偏りがある状況が一定期間続いた。その後は是正され、均されていきました。鎌倉時代あたりまでは絵画、工芸も含めて必要な作品は指定されたのではないかという話も伺います。もう一つは、各都道府県に一つは国宝があってほしいという考えもあるようです。たとえば北海道では〈土偶〉が、沖縄には〈琉球国王尚家関係資料〉が近年指定されました。
山下 
 土偶の話が出たけれど、縄文の指定は遅いでしょう。最初に指定されたのは長野県茅野市の「縄文のビーナス」ですよ。
橋本 
 平成七年指定ですから一九九〇年代です。
山下 
 岡本太郎が言い始めてから半世紀経っている。そうすると考古遺物は美的な対象ではなく埒外という意識がずっとあったのではないでしょうか。
山本 
 昔は美的対象だったものが埒外になり、それをまた一部を再考しようというのが現状でしょうね。美術工芸品の中に考古資料というジャンルがあります。昔は博物館に美術史の最初を飾る作品として考古資料が並んでいたからでしょう。
この記事の中でご紹介した本
国宝事典/便利堂
国宝事典
編 集:便利堂
出版社:便利堂
以下のオンライン書店でご購入できます
「国宝事典」出版社のホームページはこちら
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