鼎談=山本勉×山下裕二×橋本麻里 文化財保護法施行65周年記念出版『国宝事典 第四版』(便利堂)刊行を機に 一千件を超える「国宝」を俯瞰するために|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
更新日:2019年8月23日 / 新聞掲載日:2019年8月23日(第3303号)

鼎談=山本勉×山下裕二×橋本麻里
文化財保護法施行65周年記念出版『国宝事典 第四版』(便利堂)刊行を機に
一千件を超える「国宝」を俯瞰するために

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第2回
絵画、彫刻の指定の違い

『国宝事典』別掲図版頁の〈四天王立像〉

山下 裕二氏
山下 
 伊藤若冲の〈動植綵絵〉を国宝にする動きはないんですか。あれは旧御物でしょう。
橋本 
 宮内庁ですから今は国有ですね。
山下 
 旧御物を国宝指定できるのですか?
山本 
 〈正倉院正倉〉が国宝指定されているから今は可能になっています。
山下 
 〈動植綵絵〉こそ「たぐいない国民の宝」としてふさわしい。しかも海外でも評判になっているので「世界文化の見地から」という部分でも大丈夫(笑)。
山本 
 作者がわかっている場合、どの作者を国宝にするのか、その作者の中でどの作品を国宝に指定するのか議論が行われます。
橋本 
 若冲は一点も国宝指定されていません。重文も極めて少ない。
山本 
 若冲で最初に指定したいのは何ですか?
山下 
 もちろん〈動植綵絵〉です。あと〈釈迦三尊像〉も含めて三十三幅まとめて。それを否定する人は誰もいないと思うけれどなぁ。出光美術館がプライスコレクションから若冲作品を購入したからその中からも国宝が出るかもしれない。
橋本 
 絵画の指定は手厚かったけれど、例えば陶磁器はどうでしょう。
山本 
 最近は工芸品の指定は非常に少ないんですよ。
山下 
 江戸時代の焼物で国宝指定は野々村仁清の〈色絵雉香炉〉と本阿弥光悦の〈楽焼白片身変茶碗〉くらいです。名前で指定しているように思える。仁清は確かに江戸時代の京焼では一番かもしれないけれど、他にももっと魅力的なものはあると思います。名前で指定することに関して言うと、山本さんにお伺いしたいのは運慶ですよ。運慶の国宝指定は何点ですか。
山本 
 運慶作とはっきりしているのは、〈大日如来坐像〉(円成寺)、〈阿弥陀如来坐像〉〈不動明王及び二童子立像〉〈毘沙門天立像〉(願成就院)、東大寺南大門の〈金剛力士像〉、興福寺の〈弥勒仏坐像〉〈無著菩薩・世親菩薩立像〉。それから高野山金剛峯寺の〈八大童子立像〉は伝運慶作品ですね。そこに東大寺の〈俊乗上人坐像〉を運慶作として入れるかどうかですね。
山下 
 入れましょうよ。あの重源像(俊乗上人坐像)は運慶以外に考えられないと昔から思っているんです。
山本 
 絵画と彫刻でも作者の表記の違いが厳然とありますね。
山下 
 重源像は「伝運慶」とあるんですか?
山本 
 あれは史料が何もないので作者名はありません。彫刻は史料がない場合は「伝」とも付けないんです。絵画は鑑定者の目によって、落款の無いものでも作者名を断定する場合がありますね。
山下 
 なるほど。絵画と彫刻でもそこは大きな違いですね。彫刻の指定に関しては少なくとも国宝の指定は鎌倉時代までが中心となっている。南北朝時代以後のもので国宝指定はないですよね。
山本 
 作者で言うと運慶、快慶、湛慶、それから最近(平成二十八年)指定された善春の〈叡尊坐像〉ですから、いずれにせよ鎌倉時代までですね。重要文化財指定はそれ以降の時代までひろがってきています。そこで価値観の問題が出てきます。重要文化財においては歴史的な価値をきちんと見ている。そこにくわえて美的な価値がどこまであるのか。
山下 
 美的な価値は定義のしようがなくて難しいですね。
山本 
 定義のしようがないけれど鑑賞する側にはある。一般の方にはわかりにくいだろうけれど、我々には重要文化財と国宝の違いがはっきりありますね。
この記事の中でご紹介した本
国宝事典/便利堂
国宝事典
編 集:便利堂
出版社:便利堂
以下のオンライン書店でご購入できます
「国宝事典」出版社のホームページはこちら
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