山口裕之著『語源から哲学がわかる事典』日本実業出版社より刊行|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年8月26日 / 新聞掲載日:2019年8月23日(第3303号)

山口裕之著『語源から哲学がわかる事典』日本実業出版社より刊行

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 存在、感覚、知性、直観、経験、表象等々、本書で取り上げられる「キーワード」は、日頃からそれとなく使っている言葉であるけれども、いざその中身を説明しようとするとなかなか難しい。近代までの哲学の歴史のなかで、それらの言葉によって何が言い表されてきたのかを、ギリシア語やラテン語の語源にさかのぼって詳細に説明していく、本格的な入門書である。

たとえば「知性」という言葉について、西洋における使われ方とその日本語訳の変遷がていねいに辿られる。「知性」を意味するギリシア語は「ヌース」であり、「見抜く」「考える」ことを意味するが、ギリシア語で「言葉、論理、計算、推論」等を意味する「ロゴス」とはどのように異なるのか。前者には物事の核心をひといきに見て取り理解するというニュアンスが、後者にはひとつひとつ段階を踏んで論理を積み重ねていくという含みがあるという。「理性」「悟性」との比較も含めて、似ているけれども微妙に異なる言葉たちを解きほぐしていく。

また「原書のタイトルにこだわったブックガイド」も参考になる。たとえばデカルトの『方法序説』(一六三七年)の正式な題名は、「彼の理性を正しく導き、諸学問において真理を探究するための方法についての序論。加えて、屈折光学、気象学、幾何学に対してその方法を試みる」。とても長いが、このように原題が示されるだけでも古典の理解の助けになる。

終章ではさらに、みずから哲学することについて、また人工知能ではなく「人間にしかできないこと」という現代的な問題にも触れられている。本書を読み進めると、私たちの身近な生活や普段の会話のなかに、西洋の科学や哲学の考え方がどれだけ浸透しているかが浮かび上がってくる。言葉の意味を解釈し、それを決定するという営みは、「暗黙のうちに後世の思想を縛り、方向づけることである」という本書の指摘は示唆的である。(A5変・284頁・1700円)

日本実業出版社☎03・3268・5161
この記事の中でご紹介した本
語源から哲学がわかる事典/日本実業出版社
語源から哲学がわかる事典
著 者:山口 裕之
出版社:日本実業出版社
以下のオンライン書店でご購入できます
「語源から哲学がわかる事典」出版社のホームページはこちら
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