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American Picture Book Review
更新日:2019年9月2日 / 新聞掲載日:2019年8月30日(第3304号)

「ニンジャ赤ずきん」

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『Ninja Red Riding Hood』
Corey Rosen Schwartz著/Dan Santat画
(G.P. Putnam's Sons Books for Young Readers)
『ニンジャ赤ずきん』は非常に楽しい絵本だ。読者がアジアの文化をまったく知らないか、もしくはアジアはひとつの国だと思い込んでいるのであれば。

本作は『赤ずきんちゃん』をベースにしており、レッド(赤ずきんちゃん)・ウルフ(狼)・グラニー(祖母)が登場する。この3キャラクターが空手・太極拳・ヨガを習いまくるのである。

ウルフはここのところ、エサにありつけていない。獲物の小動物がことごとくマーシャルアーツの達人で、襲ったつもりが逆にボコボコにされてしまうのだ。空腹に喘ぐウルフはこのままではダメだと考え、人間に化けて「ニンジャ・スクール」に入学し、空手を学ぶ。ここでみっちり鍛錬し、やがて自信を取り戻したウルフは意気揚々と狩に出かける。

ウルフは竹やぶの中にひっそりと建つ和風住宅に忍び込んで着物を着込み、梅の花が描かれた扇子を持ってレッドの祖母に化けた。そこに赤い頭巾をかぶったレッドがピーチパイを手にやってくるが、祖母がニセモノだと見破り、突如として赤い頭巾を脱ぎ捨てる。彼女もまたニンジャ・スクールの卒業生だったのだ! しかし、レッドが頭巾の下に着ていたのは、なぜか赤いチャイナ服に黒いズボン、そしてカンフーシューズだ。

いずれにせよ修行を積んだ二者の闘いは熾烈を極めるが、最後はニンジャ・レッドの勝利に終わる。ちょうどそこへ太極拳の練習から戻った祖母が現れるが、なんと空手着に下駄履きである。

謙虚に負けを認めたウルフは考える。自分が抱える大きなストレスを軽減するために、ヨガを学ぼう。ウルフは「下を向いた犬のポーズのヨガ・センター」に向かう。巨大な大仏の前でヨガを学んだウルフはべジタリアンとなった。これでもう獲物を襲う必要もない。ウルフは真の心の平和を手に入れたのであった。

この絵本、アジアの描写が徹頭徹尾無茶苦茶だ。日本語で「おたずねもの おおかみ」と書かれた指名手配書があるところを見ると日本を想定しているようだが。ならばリサーチをすればよかろうと思う。いや、そもそも日本と中国の見分けなどつける必要もないと思っているのかもしれない。稀に日本は中国の一部と思っている者すらいる。もし本作の著者がそうであれば噴飯ものである。

……しかしながら、本作はアクション痛快、ユーモアじわりの快作なのだ。イラストも素晴らしい。人生の辛酸を舐め、思索を重ねるウルフの表情など、もうたまらなく良い。つまり、評価に非常に困る絵本なのである。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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