出版史研究へのアプローチ 雑誌・書物・新聞をめぐる5章 書評|日本出版学会関西部会(出版メディアパル)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 読書人紙面掲載 書評
  4. ビジネス・経済
  5. メディア・マスコミ
  6. 出版史研究へのアプローチ 雑誌・書物・新聞をめぐる5章の書評
読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年9月7日 / 新聞掲載日:2019年9月6日(第3305号)

出版史研究へのアプローチ 雑誌・書物・新聞をめぐる5章 書評
出版史研究への誘い
「議論の基盤となる研究手法」をまとめた論集

出版史研究へのアプローチ 雑誌・書物・新聞をめぐる5章
編集者:日本出版学会関西部会
出版社:出版メディアパル
このエントリーをはてなブックマークに追加
 文学作品を研究する際、初出紙誌や初刊本を手にすると、最初にテキストを読んだときとは異なる印象を持ったり、掲載情報から思わぬ発見をしたりすることは多い。しかし、そういう習慣のない人にはどこに眼をつければよいか意外とわかりにくいようで、「紙誌研究や書物研究は難しい」という声を若い文学研究者や大学院生からしばしば聞くことがある。

「はじめに」によれば、本書は「出版物とその取り巻く環境を、歴史的にアプローチ・研究していく学問領域」である出版史研究に関心はあるものの、敷居が高いと感じている右のような人たちに向けて「議論の基盤となる研究手法」をまとめた論集である。出版史研究の成果を個別に報告した事例は無数にある。だが、その研究方法を整理したものはこれまで皆無であった。そこに、本書の大きな意義がある。

テーマとして扱っているのは、明治期の書物、戦前の週刊誌、最近のアイドル雑誌、ライトノベル、SNSなどを含めた読者。本書を通じて、読者は近現代のさまざまな媒体へのアプローチ方法を知ることができる。

つまり、本書は近現代の出版史を研究する上でのマニュアル本だ。だからこそ、本書の使い方には次のような注意が必要である。

第一に、マニュアルが絶対ではないということ。たとえば、雑誌研究については中村健、田島悠来が行き届いたアプローチ方法を示しているが、論考のなかに編集後記への言及はない。雑誌を調査・研究する際、コピーを取っておくべき箇所は表紙・目次・本文・奥付、そして編集後記であり、そこには編集方針や執筆者の選定方法など重要な事項が記されていることがある。マニュアルはあくまでマニュアルでしかなく、媒体によってはマニュアルにない部分にも目配りが必要だ。

第二に、わかりにくい用語があること。磯部敦の論考は、誤植や折丁の裁断面などの書物の物的側面から出版社や明治期の印刷状況などへ迫り、出版史研究の可能性を示すものとして圧巻だ。しかし、「四号」「四分空き」「文選と植字」などの用語は、本書の想定される読者には解説が必要だろう。ここでつまづいてしまっては、出版史研究の豊潤な世界に入っていくことができない。各章末尾に参考文献案内が付されているので、意味のわからない語はそれらを通じて各自で調べるよう心がけたい。

第三に、成功例の提示が多くないこと。出版史研究の意義や魅力を知るためには、本書で紹介されているアプローチ方法がどのような成果を生んできたかをより具体的に示してほしかったと感じる読者も多いのではないだろうか。しかし、見方を変えればそのことは、出版史研究の可能性を切り拓くのは読者自身であり、意義や魅力は各自が発見するものであるという本書からのメッセージと受け取ることができる。

本書に誘われて、出版史研究の世界に多くの読者が飛び込むことを願ってやまない。
この記事の中でご紹介した本
出版史研究へのアプローチ 雑誌・書物・新聞をめぐる5章/出版メディアパル
出版史研究へのアプローチ 雑誌・書物・新聞をめぐる5章
編集者:日本出版学会関西部会
出版社:出版メディアパル
以下のオンライン書店でご購入できます
「出版史研究へのアプローチ 雑誌・書物・新聞をめぐる5章」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >
ビジネス・経済 > メディア・マスコミ関連記事
メディア・マスコミの関連記事をもっと見る >