嶽本野ばら ロングインタビュー (聞き手=川本直) 恋と革命の美学 嶽本野ばら 著『純潔』(新潮社)刊行記念|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年9月13日 / 新聞掲載日:2019年9月6日(第3306号)

嶽本野ばら ロングインタビュー (聞き手=川本直)
恋と革命の美学
嶽本野ばら 著『純潔』(新潮社)刊行記念

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純潔(嶽本 野ばら)新潮社
純潔
嶽本 野ばら
新潮社
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――東日本大震災の翌年、京都から上京した僕は大学のキャンパスで独り政治闘争を訴える君と出逢い、君に惹かれ、革命に身を投じていく――。二〇一五年二月の「純愛」(『新潮』掲載)から改稿四年余、嶽本野ばら氏の最新刊『純潔』(新潮社)が遂に刊行された。大ヒットした映画『下妻物語』の原作者であり、乙女のカリスマとも呼ばれた嶽本氏は、本書で長年の夢だったという〝思想に生きる若者たちの青春群像〟を描く。本書の刊行を機に、嶽本氏に本書に込めた思いをお話しいただいた。聞き手は、文芸評論家の川本直氏。
(編集部)
第1回
嶽本野ばらの帰還/若者たちの革命を描く

嶽本 野ばら氏
――『新潮』二〇一五年二月号の「純愛」一挙掲載から四年余、「純愛」あらため『純潔』の刊行、本当におめでとうございます。『純潔』は、『それいぬ――正しい乙女になるために』、『ミシン』の頃から一貫して綴られてきたストイシズム、一時期傾倒されていたオタクカルチャー、そしてこれは野ばらさんの愛読者の方でも意外だったとは思うのですが、硬派な政治思想の主題が、渾然一体となった傑作でした。野ばらさんは作家になられた頃から、半生をかけて今回の大作『純潔』を構想していらしたそうですね。
嶽本  
 というより、作家になったからには、いわゆるそういう政治活動だったり、思想のために生きる若者たちの群像劇みたいなものが書けたらいいなと、ぼんやりとした夢としてありました。でもおそらく自分にはそんな力量が付かないだろうな、いつか書けるようになればいいなと、ぼんやり憧れていただけだったのです。

――野ばらさんは京都のご出身ですが、京都といえば西田幾多郎ら京都学派、生田耕作や浅田彰といった異色・反骨の書き手を輩出した文学的にも独特の土地柄です。そういった土地柄の影響で、そのようなお気持ちを抱かれたのでしょうか。
嶽本  
 そういうわけでもないのですが、僕は中学生、高校生くらいから、京大界隈の人たちのイベント、映画の上映会だとか西部講堂でのイベントに行って遊んでもらったりして、かなり左寄りの人たちとなんとなく繋がりがあって、中高生くらいの自分の方向性が決まっていく頃に、もうすでにそういう人たちと知り合ってしまっていた。ですから、流れとしては自然に、割と過激な左翼思想のところに勝手にいたんです。多分僕が最後くらいの世代だと思うのですが、京都は僕が小学校を終わるくらいまで共産党が強かったんです。なので、先生たちも左翼系で、小学校でも普通に左的な指導をされた。ですからそれが当然のこととして自分の中の土壌にあって、親はそういうことを嫌う家庭でしたが周りの環境が、結構左寄りだったんです。

――野ばらさんは一九六八年のお生まれですが、その年は世界中で学生運動とカウンターカルチャーが盛り上がり、パリでは五月革命、東欧ではプラハの春、中国では文化大革命が起きた、正に革命の年でした。七〇年代や八〇年代では、現在の二〇一〇年代では考えられないほど、読書する人にとってマルクスをはじめとした左翼の思想書は基礎教養だったと思うのですが、やはりそういったものが『純潔』の思想のベースになっているのでしょうか? 
嶽本  
 同世代ではそんなに影響を受けてはいないと思うのですが、自分がひと世代上の人たちに影響を受けていたこともあって自然に自分のバックボーンになっていたようなところがあります。

――『純潔』内で言及されている思想家のみならず、影響を受けた思想家について教えていただけますか。
嶽本  
 僕は思想や哲学というのは、すごくオーソドックスに入っているんです。本を読む環境が家にも友人との間にもなくて、独学で本を読んでいて、哲学や思想もどこから入っていいのかわからないから、とりあえずプラトンから入ってデカルト、ニーチェと、そうやって順を追って読んでいったんです。

――ご自分で体系的に学ぶしかなかったのですね。それは逆に極めて王道ではないでしょうか。
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この記事の中でご紹介した本
純潔/新潮社
純潔
著 者:嶽本 野ばら
出版社:新潮社
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「純潔」出版社のホームページはこちら
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