穂村弘『水中翼船炎上中』(2018) リニアモーターカーの飛び込み第一号狙ってその朝までは生きろ |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2019年9月23日 / 新聞掲載日:2019年9月20日(第3307号)

リニアモーターカーの飛び込み第一号狙ってその朝までは生きろ
穂村弘『水中翼船炎上中』(2018)

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調べた限りかなり早い時期に詠まれた鉄道自殺の短歌として、詩人の萩原朔太郎が詠んだ「死なんとて踏切近く来しときに汽車の煙をみて逃げ出しき」が挙げられる。そして、とりわけ平成期以降になってからはごく当たり前の都市風景として、鉄道自殺というモチーフが短歌に登場するようになった。

蒸気機関車にも電車にも飛び込み第一号はいただろうが、必ずしも死ねたとは限らなかっただろう。その点、リニアモーターカーの飛び込み第一号はほぼ確実に死ねる。しかしリニアモーターカーの完成と実用化は、まだまだ先が見えない。一応2027年目標でリニア中央新幹線が目標にされているが、果たしてどういう現状になっているのだろう。新幹線の成長を見届け続けてきた昭和生まれには、かなり昔から未来への希望の象徴のように言われていながらなかなかSFを脱し切れていない、という印象がリニアモーターカーには拭えないのだ。

リニアモーターカーの飛び込み第一号を狙うというのは、逆説的に「それまでは死なない」「しばらくは生き続ける」という意味合いになる。とてつもなく目のぎらついた生存宣言だ。結句を六音の字足らずとしていることも、予定調和が崩れてバツっと断ち切られるという印象を読者に与える手法になっている。「生きろ」という命令形は自分自身に、そして同じ時代を過ごす全ての人々に向けられている。

さあ2027年、平穏無事(?)に、飛び込み第一号は現れるだろうか。(やまだ・わたる=歌人)
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