アーバンカルチャーズ 誘惑する都市文化,記憶する都市文化 書評|岡井 崇之(晃洋書房 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年9月21日 / 新聞掲載日:2019年9月20日(第3307号)

アーバンカルチャーズ 誘惑する都市文化,記憶する都市文化 書評
多様で異質な文化が混淆する 「社会の〝現在〟形」を見据えるために

アーバンカルチャーズ 誘惑する都市文化,記憶する都市文化
著 者:岡井 崇之
出版社:晃洋書房
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 シカゴ学派やロサンゼルス学派など都市研究の流れをひもといてみるまでもなく、都市を問うことは、社会のあり方を問うことと密接に結びついてきた。たとえもし、既存の都市研究が自明視してきたような〈都市的なるもの〉が融解・消失し始めており、それこそが「社会の〝現在〟形」を映し出しているのだとしても、それを明らかにすることが都市研究の役割であろう。この問題意識を、本書も共有している。人、モノ、資本、情報、イメージ等が世界中を駆け巡り国境を越え、デジタル・テクノロジーが進展していく中、多様で異質な文化が混淆し合う「社会の〝現在〟形」を見据えるためにこそ、既存の都市研究と「〝別の仕方で〟都市を問う」ことが必要となるはずだ。本書はこれを2部構成のもとで目指そうとする。

第1部「誘惑する/あらがう都市文化」では、都市の空間が人びとによってどのように形成され、どのように生きられているのかといった点に焦点があてられている。ケイン論文では、よさこい祭りにおいて人びとが「踊る〝主体〟」としていかに立ち現れるのかという「文化統治」の問題が論じられる。工藤論文では、ファッションが都市において身近な他者に対して自己を不可視化するための資源に変わりつつあることが指摘される。次に堀野論文は「港町神戸」を形成する際に行政、観光産業、住民たちの利害関心を背景にメディアの記号性が大きな役割を担ってきたことを、渡辺論文は大阪・釜ヶ崎で「不法占拠」といわれるような取り組みが下層労働者が生きる都市文化のひとつとして重要であったことを主張する。木本論文は福生や横須賀といった「基地の街」に注目し文化のグローバル化に関する議論を展開し、窪田論文は都市部で暮らす在米ドミニカ移民(ドミニカンヨルク)の人類学的な考察を通して移民コミュニティの多様性や揺らぎを指摘する。そして山田論文では都市の中で人びとが「セクシャル・マイノリティ」としていかに生き可視化されていくのかが、熊田論文では都市の性風俗産業に従事する人びとが「おんなのこ」として「自己」の何をいかに切断し、接合し、見せていく/隠していくのかが論じられる。

第2部「あらわれる/記憶する都市文化」は、都市がどのように表象され、社会的記憶がどのように紡がれてゆくのかが議論される。岡井論文はその冒頭にふさわしく、メディアが都市の何を記憶(あるいは忘却)させてきたのかを丹念に追っていく。堀口論文では「都市のメディア史」の系譜に連なる中で街頭テレビという都市経験が、藤田論文ではテレビドラマ『金曜日の妻たちへ』を事例に「山の手なるもの」の表象が考察される。その後、松岡論文では都市を表象するメディアとして地図(マップ)が、西尾論文では現代アートが取りあげられ、金論文では都市における新たな葬送儀礼が形成されていること、最後に上水流論文では都市の中で「負の歴史」という表象が多様な社会的立場のもと固定されないことが考察される。

以上のようにみてくると、本書が雑多な印象をあたえることは否定できないかもしれない。編者自身もそう述べている。だがそれは本書の欠点ではない。逆である。安易に学問としての「統一した視点」を欺瞞することほど危ういものはないだろう。その点で「アーバンカルチャー〝ズ〟」と複数形にした編者の思いに賛同したい。これからの都市研究で大切なこと、それは次のようなものだ。――雑多たれ。舞うがごとくつねに変化せよ。そして既存をぶっ壊せ。本書はそうした意気込みが感じられる意欲作であり、揺れ動く「社会の〝現在〟形」をとらえようともがく研究者たちの真摯さがみえる良書である。
この記事の中でご紹介した本
アーバンカルチャーズ 誘惑する都市文化,記憶する都市文化/晃洋書房
アーバンカルチャーズ 誘惑する都市文化,記憶する都市文化
著 者:岡井 崇之
出版社:晃洋書房
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「アーバンカルチャーズ 誘惑する都市文化,記憶する都市文化」出版社のホームページはこちら
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