真面目にマリファナの話をしよう 書評|佐久間 裕美子(文藝春秋 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年9月21日 / 新聞掲載日:2019年9月20日(第3307号)

真面目にマリファナの話をしよう 書評
マリファナは「ダメ? 絶対?」
アメリカのパラダイムシフトを徹底的に掘り下げる

真面目にマリファナの話をしよう
著 者:佐久間 裕美子
出版社:文藝春秋
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 最近、違法薬物の所持でピエール瀧や元KAT-TUNのメンバー・田口淳之介が逮捕されたことは芸能界の大きなニュースだった。みなさんも鮮明に覚えているだろう。では、この二人がどんな薬物を手にしたのか、それを説明できる人はどれだけいるだろうか?

答えは、ピエール瀧がコカインで、田口淳之介が大麻(マリファナ)である。こうした違法薬物はわが国では「ダメ! 絶対!」であるから、二人は世間からもメディアからも凄まじいバッシングを受けた。しかしこれがアメリカだったらどうであろうか? もしかしたら、マリファナはアメリカの州によっては合法ということをみなさんは何となく知っているかもしれない。この本は、私たちがあいまいにしか知らないアメリカのマリファナについて徹底的に掘り下げた作品である。

マリファナには二つの面がある。二つの成分と言ってもいいだろう。ハイになる成分のTHCと、医療効果のあるCBDだ。従って、医薬品としてのマリファナという面と、嗜好品としてのマリファナという論じ方ができる。

医薬品としてのマリファナの作用は、痛みを取るということだけではなく、免疫を強化し、がん細胞の増殖を抑え、抗がん剤の吐き気を和らげるなど多岐にわたる。がんの他にも、てんかんや緑内障、多発性硬化症、パーキンソン病など、実に様々な病気に効果を発揮するという。もちろん、医療マリファナが本格的に医薬品として承認を得るためには、既存の薬との効果の比較が必要になる。しかし、その候補としての資格は十分にありそうだ。

嗜好品としてのマリファナに関しては、その依存性と乱用が問題になる。しかしこれもマリファナをルールに基づき販売・使用すれば問題は起こりそうにない。「マリファナは、より深刻なドラッグにつながる『ゲイトウェイ』である」という意見もあるが、これと一〇〇%反対の意見もある。

現在、アメリカではオピオイド(ヘロイン、モルヒネ、コデインなど)中毒が重大な社会問題となっている。毎日一三〇人が過剰摂取で死亡しているらしい。この深刻な中毒を断ち切るために、代わりにマリファナを使用することが有効だというのだ。マリファナによるオピオイドからの脱却である。

二〇一六年六月の時点で、全米三十一州で医療マリファナが解禁に、九州が完全に合法になっている。合法とは、アルコールなどと同じ扱いということである。合法化された州では、マリファナはビッグビジネスになっており、リーマンショック後の経済再生の起爆剤になっている。

では、そもそもなぜマリファナは禁止薬物となっていたのであろうか。それは人種差別と密接に関わっている。マリファナはメキシコからアメリカに入ってきて、主に黒人が使用した。そのため、メキシコ人と黒人を差別する政治家・役人がマリファナに「悪」というレッテルを貼ったのだ。

しかし、人々の間からマリファナ合法化運動が巻き起こる。それは、自由と平等を求め、戦争や差別に反対し、人間の権利を勝ち取ろうとするリベラルの運動でもあった。だから保守政権はマリファナに対して強い規制をかけてきた。ニクソンやレーガンがそうである。しかし、もはや勝負はついたと言えるだろう。

いや、アメリカだけではない。いわゆる「先進国」で医療マリファナまでもが犯罪と見なされる国は日本くらいである。私の先輩の医師の持論は、「JT(日本たばこ)はたばこを売るのを止めて、マリファナ許可のロビー活動をすればいい」というものだ。たばこの巨悪を考えれば、この意見には私もうなずくことができる。二〇年後、五〇年後の日本でマリファナはどういう扱いになっているだろうか。少なくとも、マリファナを所持していた芸能人がメディアの前で土下座する姿は見られなくなるのではないか。

人間の固定観念をひっくり返すのは簡単ではない。でもこの本はアメリカのパラダイムシフトを描くことによって、私たちの通念をひっくり返すパワーを持っている。
この記事の中でご紹介した本
真面目にマリファナの話をしよう/文藝春秋
真面目にマリファナの話をしよう
著 者:佐久間 裕美子
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「真面目にマリファナの話をしよう」出版社のホームページはこちら
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