レオ・シュトラウスレオ・シュトラウスの政治哲学『自然権と歴史』を読み解く 書評|石崎 嘉彦(ミネルヴァ書房 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年9月28日 / 新聞掲載日:2019年9月27日(第3308号)

レオ・シュトラウスレオ・シュトラウスの政治哲学『自然権と歴史』を読み解く 書評
シュトラウスをバラエティ豊かに論じる
十四名の執筆勢によるNRHの検討

レオ・シュトラウスレオ・シュトラウスの政治哲学『自然権と歴史』を読み解く
著 者:石崎 嘉彦、厚見 恵一郎
出版社:ミネルヴァ書房
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 本書は、レオ・シュトラウスの主著『自然権と歴史』(以下NRHと略記)の議論の大枠を示す共同研究書である。NRHは六章立てだが、Ⅴ章Ⅵ章の各A・B節を独立した部と捉えると、序論を含め全部で九つの部から構成される。本書はこの構成に対応する形で本論一部につき二名の研究者がそれぞれ一章ずつ用いて異なる視角から考察する形をとり、総勢一四名の執筆陣によりNRH全体が念入りに検討される。本書各章はそれぞれの専門分野から評価されるべき内容を持つが、この書評では本書全体について検討したい。

まず本書の面白いところは、一方で総勢一四人がシュトラウス一人と対峙していながら、他方で執筆者一人一人は自身の問題関心に即して自由にシュトラウスを論じ、その結果その魅力と問題点をバラエティ豊かに示している点である。それはnatural rightの訳語に関しても現れる。本書の副題ではnatural rightの訳語として「自然権」を採用しているが、本書のなかではあえて訳語の統一をせず、「自然権」か「自然的正」を採るかは各章の執筆者の見解に委ねられている。シュトラウスのnatural rightは一様には定義しにくい概念であり、本書はその多義性をありのままさらけ出す。シュトラウスの難解さや微妙な表現をそのまま受けとめることを貫いている格好だ。本書の大きな特徴は、各執筆者がシュトラウスのnatural rightとは何かについて探究することを共同研究の共通課題としながら、NRHの各部の固有の論点を自由に掘り下げていることである。

この点に関わって次の特徴と問題点を指摘することができる。本書は必ずしもすべてではないが、二名によって検討される各部が、一つはシュトラウスに批判的あるいは距離をとって考察する章、もう一つはシュトラウス自身に即して読解する章に分かれる傾向にある。おそらくこれはそのように役割分担をしたわけではなく、自由な考察の結果であろう。注目すべきは、批判的な章のほうが逆説的にシュトラウスの政治哲学の持ち味をクリアに描き出すことに成功している点である。シュトラウスに即して読解する章は、曖昧な態度やエソテリシズムを単純化せず丁寧に追うことを貫く結果、問題意識の深さと立論の巧妙さを明らかにしつつも、彼の政治哲学を理解するには「注意深く読むこと」が必要である、それが出発点であるという(ある意味当然な)結論を提示して終わり、最後まで読んできた読者にやや肩透かしを食わせる。シュトラウスにおいて「注意深く読むこと」が哲学することと同義だとしても、その上でなお踏み込んでほしかったと思うのは欲張りすぎであろうか。

しかし本書全体を読み通すと、シュトラウスのnatural rightは、科学と歴史に表象される近代的思考を一つの帰結とするアテナイとイェルサレムという西洋思想の源流に対置される、政治哲学に基礎づけられた新しい哲学の原理であることが理解できる。NRHは読者への要求度が高い書物であるが、本書がその読解に有益な助けを与えることは間違いない。
この記事の中でご紹介した本
レオ・シュトラウスレオ・シュトラウスの政治哲学『自然権と歴史』を読み解く/ミネルヴァ書房
レオ・シュトラウスレオ・シュトラウスの政治哲学『自然権と歴史』を読み解く
著 者:石崎 嘉彦、厚見 恵一郎
出版社:ミネルヴァ書房
以下のオンライン書店でご購入できます
「レオ・シュトラウスレオ・シュトラウスの政治哲学『自然権と歴史』を読み解く」出版社のホームページはこちら
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