抗うニュースキャスター TV報道現場からの思考録 書評|金平 茂紀(かもがわ出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 読書人紙面掲載 書評
  4. 抗うニュースキャスター TV報道現場からの思考録の書評
読書人紙面掲載 書評
更新日:2016年12月2日 / 新聞掲載日:2016年12月2日(第3167号)

抗うニュースキャスター TV報道現場からの思考録 書評
権力に対峙する松明を受け継ぐ
真っ先に読むべきは日々の放送に携わるテレビ人たちだろう

抗うニュースキャスター TV報道現場からの思考録
出版社:かもがわ出版
このエントリーをはてなブックマークに追加
この本は誰に読んでほしいかな。高江のヘリパッドの建設強行のニュースを伝えない本土のメディアに怒る人たち、公共放送のトップの再選を許さないと声を上げる人たちか。それもあるが、真っ先に読むべきは、日々の放送に携わるテレビ人たちだろう。

これはテレビ報道の最前線で日々闘うキャスターによる、他に類を見ない覚悟の書だ。「ニュースコープ」「NEWS23」「報道特集」など、TBSの看板番組の編責やキャスターを務めてきた著者が、2010年から2016年までに発表した論考をまとめた。

1968年3月、テレビキャスター田英夫が辞任に追い込まれた。きっかけは、それまでアメリカの側からしか伝えなかったベトナム戦争を、爆撃される側から世界で初めてリポートしたことだ。時の政権は激怒し、郵政族議員がTBSの今道社長に圧力をかけた。筆者は生前の田氏に迫り、当時のいきさつを浮かび上がらせた。社長は涙を浮かべて言った。「このままじゃTBSは危ない」。言論の自由の大切さを知る田氏は忸怩たる思いだった。田氏の降板を受けて労働組合が動く。その中心となったのは、萩元晴彦・村木良彦・今野勉といった若き放送人たちだった。萩元氏の言葉が残っている。「敵は何か。むしろ内部の敵と闘うことこそが本当の闘いの一つだと思う」。

著者はこの言葉は今こそ必要とされる言葉だと考える。政治権力はメディアに対して干渉や介入、弾圧を行ってきた。しかし、問題は外部の敵によるのではなく、メディア側の組織論理、個人の姿勢や矜持に関わり、それが自己規制や自発的な隷従をもたらしている。自由闊達さを奪うものは他ならぬ自分自身ではないかというのだ。

2010年4月、内部告発サイト「ウィキリークス」は、軍の機密ビデオを入手、イラク戦争においてまるでゲームを楽しむかのような機銃掃射のようすを明らかにした。独立系テレビ局「デモクラシー・ナウ」のエイミー・グッドマンは、この告発を評価し大きく取り上げた。報道をきっかけに、機銃掃射を行った2人の兵士が責任を認め謝罪し、遺族との和解を求めた。しかし大手メディアはこの大スクープに対して腰が引けていた。著者は、エイミー・グッドマンに取材し、こんな言葉を引き出す。「主流メディアは戦争をあおっている。人々は何が実際に起きているかわからない。ウィキリークスやデモクラシー・ナウが毎日やっていることこそが主流なんです。それこそ人々が気にかけていることです」。 アメリカのジャーナリズムは、内部告発をもみ消そうとする権力と、そうはさせまいとするメディアとのせめぎ合いの歴史だった。主戦場は今や新聞・テレビからネットへと舞台を移そうとしている。

田英夫、萩元晴彦、筑紫哲也。先人たちは権力の暴走や腐敗を監視するジャーナリストであり続けた。金平氏はその「松明」受け継ぐ必要性を訴え、それに続く者へのエールを送る。わたしもまた、微力ではあるが「松明」を掲げるひとりでありたいものだ。
この記事の中でご紹介した本
抗うニュースキャスター  TV報道現場からの思考録/かもがわ出版
抗うニュースキャスター TV報道現場からの思考録
著 者:金平 茂紀
出版社:かもがわ出版
以下のオンライン書店でご購入できます
このエントリーをはてなブックマークに追加
永田 浩三 氏の関連記事
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >