第四十一回講談社本田靖春ノンフィクション賞 第三十五回講談社科学出版賞 贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年10月1日 / 新聞掲載日:2019年9月27日(第3308号)

第四十一回講談社本田靖春ノンフィクション賞 第三十五回講談社科学出版賞 贈呈式

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松本創氏㊧と青野由利氏


九月十三日、都内にて第四十一回講談社本田靖春ノンフィクション賞(講談社ノンフィクション賞改名)、第三十五回講談社科学出版賞の贈呈式が開催された。本田靖春ノンフィクション賞は松本創氏『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(東洋経済新報社)、科学出版賞は青野由利氏『ゲノム編集の光と闇 人類の未来に何をもたらすか』(筑摩書房)が受賞した。本田靖春ノンフィクション賞の選考委員である後藤正治氏は以下のように語った。

「この作品の大きな特徴は、遺族の方が行っている活動に寄り添い、その肩越しから事故のその後を書いている点です。事故の責任を追及することは大切ですが、なぜこの悲惨な事故が起きたのか、その要因を突き止め、再び事故を起こさないために何をすべきなのか。事故を社会化することに精力を傾ける遺族の活動を、松本さんは長い歳月をかけ取材し、書き上げています。そこに、この本の趣や優れたところが凝縮しているのではないかと思います」

科学出版賞の選考委員の黒田玲子氏は、選評を次のように述べた。

「本のタイトルが〝光と影〟ではなく、〝光と闇〟であることに、問題の深刻さが表れていると思います。ゲノム編集は素晴らしい技術として紹介されることが多いですが、賛否両論だった遺伝子組み換え技術と何が違うのか、規制はなくていいのか、どう進展していくのか。誰もが思う疑問に、青野さんは丁寧に応えています。この本を読み、遺伝子技術の展開に興味を持つ人が増えることを期待しています」

受賞者挨拶では、松本氏が以下のように想いを述べた。

「この作品を書き上げることができたのは、ご遺族であり、本書の主人公である淺野さんから受けた負託に応えなければならないという想いがあったからです。あの不条理な事故で大きな犠牲を払った淺野さんが、それでも残された者の責務として人生の全てをかけ、JR西日本という巨大企業に挑んだ。その戦いの記録を世に問うことが自分の仕事であり、中途半端なものは書けないと考えていました。

ノンフィクションを書くということは、一つの事象や人物に向き合い、交渉や説得を重ね、取材で得た事実や証言を元に考え抜き、構築していくことであると思います。時間の腐食に耐えうる作品を書くには、相応の時間が必要です。自分自身と取材相手には、いつも誠実な態度で、これからも書き続けていく所存です」

最後に、青野氏が受賞に対する想いと執筆のきっかけを次のように語った。

「本書を書くきっかけには、逆説的ですが〝生命倫理疲れ〟というものがありました。新聞記者として、先端の生命科学と社会の間で何が起きているかフォローしてきましたが、新しい技術が出る度に、また一から同じことを繰り返さなくてはいけないのかという徒労感がありました。

そのとき登場したのが、ゲノム編集技術〝クリスパー〟でした。生命科学と社会の関係をもう一度網羅的に振り返ってまとめるチャンスは今をおいてないと感じ、本書を書くことにしました。

今後は、今までの路線をさらに追求していくか、別の路線を書いていくのか、改めて考えようと思っています」
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