日本の現場 地方紙で読む2016 書評|早稲田大学ジャーナリズム研究所(早稲田大学出版部)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2016年12月2日 / 新聞掲載日:2016年12月2日(第3167号)

日本の現場 地方紙で読む2016 書評
地方ジャーナリズムの使命
地元の問題をより深く掘り下げ、書き続けること

日本の現場 地方紙で読む2016
出版社:早稲田大学出版部
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「地方紙で読む」という副題を掲げた本書は二〇一〇年、二〇一二年に続く三冊目である。本紙の「マスコミ回顧」(二〇一〇年十二月二十四日号)で第一作について筆者は、一貫して持続する社会問題を丹念に迫っている主役が実は地方紙であり、それはジャーナリズムにとっても大事な庶民の目線であることを見事に描き出している書として紹介した。

本書はブロック紙の北海道新聞と地方紙の計十八紙から、二〇一五、二〇一六年の三十六本の連載・企画記事を丁寧に取り上げている。戦後七〇年とそれに類する「戦後」「憲法」というテーマが四割選ばれた。

戦争の実相を知る人が少なくなる中、「語る責任」を感じた人、「いま伝えないと」という焦燥感や悲壮感を抱いている人もいたという(高知新聞「秋(とき)のしずく」取材後記、三二五頁)。書き続けること(事実の発掘)もそうだが、いま書かなければならないこと、伝えなければならないことを伝えるのがジャーナリズムである。このことを再確認する必要性を、これからジャーナリズムを目指す人たちに届けている。

本書の意義は、地方紙が伝える東京目線、中央目線ではない報道、例えば東日本大震災、福島原発事故(河北新報ほか)、熊本地震(熊本日日)といったいまに近いジャーナリズムもあれば、基地問題や差別・人権(水俣病、ハンセン病)など長いスパンで報じられているものが少なくない。それは決して地方の問題ではなく庶民の問題でもある。点を線にしていくことにジャーナリズムの真骨頂があるはずだ。

新聞離れ、発行部数の減少が著しいのは何も数百万部を誇る全国紙のみならず、地方紙にとっても深刻な問題である。大メディアはデジタルスペースで生き残ろうともがいている。

地方紙が同じことをできるわけではなく、そうしようともがくことより、そもそも読者数、読者層が異なる歴史と現実をより大切にすべきではないだろうか。それは「東京目線でない」ことを意識するあまり、地方目線を失うことにもつながりかねない危うさを覚えるからだ。

中央対地方、中央から地方への流れ(またはその逆)という、対立・二極構造的な報道環境を憂えるのではなく、今日地方紙が抱える地元の問題をより深く掘り下げて、書き続けること――それが日本社会の問題点としてより広く浸透させるような流れを構築することが、地方ジャーナリズムの使命ではないだろうか。

警察の裏金問題(北海道新聞、二〇〇四年)や富山市議会政務活動費不正問題(北日本新聞)など見事な調査報道が行われている。地方発ジャーナリズムの成果であり、真実追及への原動力がそこにある。
この記事の中でご紹介した本
日本の現場  地方紙で読む2016/早稲田大学出版部
日本の現場 地方紙で読む2016
著 者:早稲田大学ジャーナリズム研究所
出版社:早稲田大学出版部
「日本の現場 地方紙で読む2016」は以下からご購入できます
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