宮内悠介インタビュー ぼくは、ぼくの戰爭が書きたい 『遠い他国でひょんと死ぬるや 』(祥伝社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年10月11日 / 新聞掲載日:2019年10月11日(第3310号)

宮内悠介インタビュー
ぼくは、ぼくの戰爭が書きたい
『遠い他国でひょんと死ぬるや 』(祥伝社)

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 「浩三、おまえならこの時代をどう生きる?」。上京した戦時下の東京で短い青春を謳歌し、激戦地ルソン島で二三歳の若い命を散らした、戦没詩人・竹内浩三。小説の主人公・須藤宏は、若き日に出会った竹内浩三の詩に導かれるように、浩三最期の地・フィリピンへ向かう。浩三の足跡を辿り、浩三が書いたであろう〝第三のノート〟を求めて旅を続ける須藤がそこで出会ったものとは――。このたび刊行された宮内悠介氏の新刊『遠い他国でひょんと死ぬるや』(祥伝社)は、戦没詩人・竹内浩三を切り口に、山下財宝、山岳民族、イスラム独立闘争が絡み合う、予測不能の冒険小説。宮内氏は今回の作品で、現代フィリピンの宿痾やフィリピンと日本両国の負の記憶、そして戦争の本質に迫る。本書の刊行を機に、宮内氏にお話を伺った。インタビューでは、本作の取材で訪れたフィリピンの旅の印象から創作の裏側、日常の執筆スタイルまで幅広くお話いただいた。      (編集部)
第1回
戦没詩人・竹内浩三とフィリピンの旅

宮内 悠介氏
――本書は、フィリピンを舞台に戦没詩人・竹内浩三の足跡を追う旅がベースになっています。タイトルも竹内浩三の有名な詩「骨のうたう」からとられていますが、宮内さんと竹内浩三との出会い、そして本作を構想されるまでの経緯をお聞かせ下さい。
宮内  
 竹内浩三を知ったのは、恥ずかしながらそんなに昔からではないんです。はじめて知ったのは五年くらい前で、妻から教わりました。それは朗読音源だったか朗読そのものであったか、詩の朗読を聞かせてもらったのですが、最初に聞いたのは、竹内浩三の「よく生きてきたと思う」という詩であったと思います。

――奥様は、近代詩の伝道師を称されてポエトリーカフェを主宰なさっているPippoさんですね。宮内さんがはじめて竹内浩三の詩を聞いたとき、どのようにお感じになられたのでしょうか。竹内浩三のどこに惹かれたのでしょうか?
宮内  
 大変な時勢下で、一種異様なまでにみずみずしい青年の感性が保たれているように思うのです。バイアスがかかっていないというべきか。ですから、知識でしかないはずの当時のことがリアルに感じられるのでした。

――小説中で、主人公の元映像ディレクター須藤宏(ヒロ)は、「浩三、おまえならこの時代をどう生きる?」と語りかけます。須藤には「竹内浩三、第三のノートを求めて」という自分の中の大きなテーマがあるわけですが、それは宮内さんが主人公に託した部分でもあるのでしょうか。また、小説の中で紹介されている竹内浩三の日記には「ぼくは、ぼくの手で、戰爭を、ぼくの戰爭がかきたい」(三〇頁)とあります。
宮内  
 今回は、作品のテーマの一つが歴史でした。ですから、その切り口として竹内浩三を取りあげれば、スムーズに物語が立ち上げられるのではないかと考えたのです。その前に出した「ディレイ・エフェクト」という中編(初出『食べるのがおそい 四号』(二〇一七年十月)/『ディレイ・エフェクト』文藝春秋、二〇一八年二月)では、戦時中の光景が日常と重なるという話を書いたのですが、それはあくまで戦時中の日常生活だったので、今回は戦争そのものに、頑張って踏み込んでみたのでした。

――宮内さんがこの連載を始められるときに、ツイッターで「もしかすると、私の作では一番小説っぽい小説かも」とつぶやかれていました。今回の小説では現在と地続きの現代の日本とフィリピンを舞台に描かれていますね。
宮内  
 そうですね、現代の設定です。連載開始時の「小説らしい小説」というのはおそらくそのときの直感だったと思うのですが、ただ私の場合、変化球の作品がやはり多いと思うんです。いまお話しした「ディレイ・エフェクト」もSF設定ですし、それとほぼ同時に刊行した『超動く家にて』(東京創元社、二〇一八年二月)は偏った設定の話を集めた自選短編集で、今年の四月に出した『偶然の聖地』(講談社)は、註釈が原稿用紙一〇〇枚分くらい、本文に三〇〇くらいの「註」が入っているという本でした。ですから今回が小説らしい小説というより、これまで出してきた本が小説らしくなさ過ぎたのかもしれません(笑)。

――小説の序盤は、主人公の須藤宏が仕事を辞め、初心に立ち返ってフィリピンに渡り、「竹内浩三、〝第三のノート〟を追う」というルポルタージュのようなかたちで立ち上がります。このまま須藤の竹内浩三探しの旅が続くのかと思ったら、いきなり甲高いブレーキ音とともに車が突っ込んで来て、宮内ワールドが開幕する展開には驚きました。
宮内  
 今回の作品では最初に読者にお伝えしなければいけない情報が多かったので、書き出しはルポルタージュ風にして、それを入口にしたのでした。
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この記事の中でご紹介した本
遠い他国でひょんと死ぬるや /祥伝社
遠い他国でひょんと死ぬるや
著 者:宮内 悠介
出版社:祥伝社
以下のオンライン書店でご購入できます
「遠い他国でひょんと死ぬるや 」出版社のホームページはこちら
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