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American Picture Book Review
更新日:2019年10月14日 / 新聞掲載日:2019年10月11日(第3310号)

「ミックスのボク!」

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『Mixed Me!』
Taye Diggs著/Shane W.Evans画
(Feiwel & Friends)
両親の人種や民族が異なる場合、日本では「ハーフ」と呼ばれる。ハーフは「半分」であり、「全部」ではない。それをネガティブと捉え、2つの文化を併せ持つことから「ダブル」という呼称も生まれた。だが、ハーフもダブルもアメリカでは通じず、「mixed race(混じった人種)」などと呼ぶ。

ちなみにハーフとダブルは共に2つの人種民族のミックスを意味するが、実際には2つに留まらない人も多い。両親のどちらかがミックスなら子供は3つ、両親揃ってミックスだと4つ、さらに両親が3つ、4つのバックグラウンドを持つ場合、子は驚くほどの多文化ミックスとなる。

『ミックスのボク!』は、黒人俳優のタイ・ディグスによる絵本だ。ディグスの元妻はユダヤ系の白人であり、2人の子供はミックスだ。ミックスの子供は多くの場合、肌の色、髪の質、顔立ちといった人種的特徴が両親の中間的なものとなる。中にはどちらかに傾き、他方の親の特徴をほとんど受け継がない、さらにはどちらの人種にも見えないこともある。筆者の友人に黒人と白人のカップルがいるが、子供たちはラティーノに見える。こんな子供たちは世間から「あなたはいったい何?」という扱いを受ける。日本でなら「なに人?」となるが、アメリカには国籍を訪ねる習慣はなく、人種民族的に「何?」となる。だが、本作の主人公マイクは両親からミックスであることを肯定的に教えられ、他者の目など一切気にせず、今日も今日とて元気にスケートボードをかっ飛ばす。

本作は言葉遊びが多用されており、それも楽しい。マイクは周りから「mixed-up(ごた混ぜ)」と呼ばれるが、肌の色が濃い父と明るい母の「パーフェクトなミックス」なのだ。

マイクの大好きなジュースの絵をよく見ると、ジュースの名が「Blended(混ぜられた)」「Fused(融合した)」などMixedの同義語になっている。ペットの犬の名前「Mixamillion」はマキシミリアンという名の綴り変えだ。ドッグフードの袋には「Various Vittles(いろいろな原料)」と書かれている。

作者がアフリカン・アメリカンであることからリズミカルな黒人英語的表現も多い。マイクのカーリーヘアは「スーパー・クレイジー・フレッシュ・クール(超・すごい・イケてる・かっこいい)」、母親は息子に「ヘイ、スウィート・ボーイ、スウィート・パイ、ハニー・ブー」と、それはそれはスウィートに呼びかける。Boo(ブー)は愛しい人、恋人といった意味だ。

アメリカでのMixedの在りよう、両親から子供への愛情、そして豊かな言葉遊びが渾然一体に「Mixed」されたのが本作なのである。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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