作家の人たち 書評|倉知 淳(幻冬舎 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2019年10月19日 / 新聞掲載日:2019年10月18日(第3311号)

倉知淳著『作家の人たち』

作家の人たち
著 者:倉知 淳
出版社:幻冬舎
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作家の人たち(倉知 淳)幻冬舎
作家の人たち
倉知 淳
幻冬舎
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本作は、七つの短編から成るフィクションである。もう一度、強く念を押させていただく。本作は、フィクションである。しかしその実、どの話も現在の紙媒体の衰退・本離れ・小説家の苦労をリアルに描いたように見える。無論私も、この本に出合う前から出版業界が明るいものだとは思っていなかった。が、それにしても、である。(これが現実なら泣く)

短編集なので結果的に登場人物は多くなるが、難読・珍名ぞろいの彼らの名前を覚える必要は恐らくない。何故なら、全員が本を売る人か、本を書く人かのどちらかに分けることが出来、それだけの認識で事足りるからだ。

七編の内容をごく簡単にお伝えすると、
第一編、某出版社の編集者たちが、売れない作家につきまとわれる「押し売り作家」
第二編、文学賞受賞をきっかけに小説家になった男の転落人生「夢の印税生活」
第三編、大型新人発掘を命じられた編集者の苦労話「持ち込み歓迎」
第四編、本の悪魔に願った些細な願いに翻弄される、編集者と作家「悪魔のささやき」
第五編、人でなし、けれどそれ故に優秀な編集者「らのべっ!」
第六編、てきとうな人間たちが、利己的に判断を下す「文学賞選考会」
第七編、第二編の作家のその後「遺作」

作者の意図か、それとも出版界への恨みが滲み出ているのか、どの話も救いようがないバッドエンドで、あっけなく終わる。おまけに登場人物は皆愚かだったり、欲望に忠実だったり、とにかく他人を尊重するということを知らないように見える。作家や編集者を志望する人間が読んだら、顔をしかめて読書を中断するだろう。反面教師を狙ったにしても、著者は若者に微塵も夢を持たせる気はないらしい。寧ろ、嬉々としてその夢を壊そうと書いているようにさえ感じる。

実はその一人である私は、何回か読み始めたことを後悔しながら、何とか本書を読了した。可能なら、同士諸君には「これらは全てフィクションだ」と言って終わりたい。

ところが、登場する「売れない小説家」の名前の共通点に気付くとそう思えなくなる。苗字の一部に、もれなく全員「倉」の字が入っているのだ。

そして本書の著者の名前は、「倉知淳」。本書の拭いきれないリアルは、その「倉」から来ている。偶然のはずがない。ひょっとしたら、全編でなくともいくつかは、部分的には、著者の体験話や実際に聞いた話が混じっているのではないだろうか? そう思ってしまったら、もう本書はフィクションではなくなる。

他人の心にトラウマ級の傷を残す本作を、魅力的と表現するのはそぐわないと思う。しかし、我々読者に多大な影響を及ぼす本というものの魔力を感じる一冊だと思う。また、極々僅かにではあるものの、著者からの「人生に慎重になれ」というメッセージを感じ取れるかもしれない。

最後にひとつ、本書を手に取ったらあとがきを見てほしい。私は未だ、このようなあとがきを見たことがない。

是非、大人げない著者の悪魔的な遊び心を感じ取ってほしい。
この記事の中でご紹介した本
作家の人たち/幻冬舎
作家の人たち
著 者:倉知 淳
出版社:幻冬舎
以下のオンライン書店でご購入できます
「作家の人たち」出版社のホームページはこちら
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