第五十五回谷崎潤一郎賞 贈呈式 第十四回中央公論文芸賞|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年10月18日 / 新聞掲載日:2019年10月18日(第3311号)

第五十五回谷崎潤一郎賞 贈呈式 第十四回中央公論文芸賞

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谷崎潤一郎賞の村田喜代子氏㊧と中央公論文芸賞の吉田修一氏

十月九日、都内にて第五十五回谷崎潤一郎賞と、第十四回中央公論文芸賞の贈呈式が行われた。それぞれの賞は、村田喜代子氏『飛族』(文藝春秋)、吉田修一氏『国宝(上・下)』(朝日新聞出版)に贈られた。

最初に谷崎賞の選考委員である池澤夏樹氏が講評を述べた。

「全体として民話風な作品です。大変おっとりした平凡な日々の出来事を描きながら、海や空といった自然描写が素晴らしい。それでいて、全体を通して不思議なことが様々ある。村田さんは日常生活そのものが異次元に繋がっていることを描くのが、本当に上手なのだと思います。非常に優れた小説です」。

村田喜代子氏は、受賞の言葉を以下のように語った。

「私は小説を書くとき、ないことは書きません。あることしか書いていないんです。小説を書いていると、世の中は何でこんなに不思議に満ちているのだろうと、いつも思います。

この作品の取材で色々と見ているうちに、これはお年寄りとともに現代の日本を描くことができる。同時に人間の本来持っている能力の素晴らしさが書けるのではないかと思いました。書きながらの毎日はすごく楽しかった。楽しい思い出がたくさんある作品です」。

次に中公文芸賞の選考委員を代表し、村山由佳氏が選評を述べた。

「歌舞伎の世界の光と闇を、どうやってここまで克明に描くことができたのか。本当に素晴らしい作品です。物語の中に、取材や勉強の跡が全く見えません。下手に書くと見えてしまうものですが、一切消し去られている。本物の虚構、嘘の物語です。だからこそ、私たち読者は物語の世界に安心して遊ぶことができます。

もう一つ、文章がびっくりするくらい色っぽく、熱量の高い文章で物語を構築しています。その熱量の高さと、無駄な描写が一つもない冷徹さが、完璧に噛み合っている。小説という形でなければ伝えられない感動があることを、知ってもらえる作品です」。

最後に吉田氏は、次のように受賞に対する想いを語った。

「僕は、自分は何も持っていない人間だと思っているので、新しい世界へ飛び込んで、自分にないものを発見できたらいいなと、いつも思っています。

この作品は、歌舞伎が題材です。あるきっかけで、歌舞伎役者の四代目中村鴈治郎さんと知り合い、歌舞伎の世界に興味を持ちました。彼に「歌舞伎の世界を見たいのであれば、黒子の衣裳で舞台裏から取材したらどうか」と言っていただきました。最初は冗談だと思っていたのですが、すぐに衣裳を作ってくださり、毎月の公演に付いてまわりました。お弟子さんたちと一緒に舞台裏を駆け回りながら、何年か過ごすことができました。本当に得がたい経験で、楽しくてしょうがなかった。成駒家の方々やお弟子さんがいなければ、この作品は書けなかった。最初から色々な人の協力があり、助けていただきながら書けたのだと改めて思います。

新しい世界に飛び込んで書いた作品が、このような形で認められ、勇気をもらいました。自分がやってきたことは間違っていなかったのだと思っています」。
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