【横尾 忠則】野良サングラスの運命的な法則/台風で外出できないおでんの阻喪|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年10月21日 / 新聞掲載日:2019年10月18日(第3311号)

野良サングラスの運命的な法則/台風で外出できないおでんの阻喪

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和田誠さん、平野レミさんと。2016年(撮影・徳永明美)
2019.10.7
 クリームのドラマー、ジンジャー・ベイカー死去。67年NYで、ビートルズより凄いのが来ると聞いて8stの小さいライブハウスで生まれて初めてライブコンサートを観る。床に敷かれたカーペットだけの会場でギターがエリック・クラプトンだなんてこの時は誰も知らない。客数は30人弱。コンサートホールの帰りにファーストアルバム「フレッシュ・クリーム」を買う。翌年解散。クリームの歴史的幻のライブを目撃した日本人は一人もいないと中村とうようさんは言った。

400勝投手金田正一さん死去。こちらも国鉄時代からの歴史的スーパースター。

「ころんだら終りだ」と言いながら玄関でハデにころぶ。一端ころぶと途中で切り返せない。とことんころぶしかない。ドタン、バタン、コロリン。

2日続けてタマを描いた疲れが出て、今日は無為。
2019.10.8
史上最大の大型台風が来るらしい。灰色の雲間から弱弱しい冷たい光が時々差す。何もしたくないがリハビリのつもりでタマの小品一点。タマの顔が次第に怪猫になってきた。

あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」が厳重体制の中で人数制限の再開。
2019.10.9
 ここ1ヶ月以上、仕事関係の人に一人も会っていない。このまま1年会わなくても画家は本来孤独を愛する人種だから平気、平気。

掲載された書評を出版の広告媒体に使用したいという依頼があるが、書評そのものが宣伝物だから、あれで満足して下さい。

体力が落ちているせいか、風邪気味。葛根湯で解消。

昔、妻が拾ってきたサングラスが気に入って長い間、愛用していたが、それが無くなった。野良サングラスは、いつか時期が来たら元の野良に戻るらしい。そんなことがあってしばらくした頃、再び妻がサングラスを都心で拾ってきた。そのサングラスは消えた野良サングラスと同じメーカーのものだ。何んで野良が戻ってきたの? 野良サングラスにはそれ自体の運命的な法則がどうやらあるらしい。
2019.10.10
 ベッドルームの本の整理を風間君に手伝ってもらう。ちょっと動いただけなのに息切れがして、まだ完全でないことが証明された。

終日、アトリエのソファに根を下した状態で頼まれもしない文章を書く。あゝシンドー。

次第に空の雲行きが
怪しくなってきたが、土、日の19号台風が北上し始めているのだろうか。
2019.10.11
 19号台風の気圧のせいか体調を狂わす。

和田誠君が亡くなった。ここ2、3年誰も連絡が取れないと聞いていた。7月から入院していたが、死因は死の数日前の風邪による肺炎だったそうだ。老齢の肺炎は要注意。
2019.10.12
 台風19号対策でアトリエのガラスを業者に来てもらってテープ貼りする。雨で外出できないおでん、やっぱり布団の上でやっちゃった。

テレビは各局、台風情報一色。「命を守るように」という通告はわかるが、過去の同じ映像を流すだけで何が起っているのか、さっぱりわからない。
2019.10.13
 朝、やっとテレビで知ったのは各地で川が氾濫していることだった。玉川の増水で世田谷がかなり被害を受けているのを知った。

散歩中の磯﨑憲一郎さんに会う。元気にスタスタ歩いているが、とってもあんな風には歩けない。今度500ページの本を出すが、その中に2人の対談や、以前書いてくれた作品論などが入るそうだ。どーいうわけか今の若い人はどんどん真面目になっていって面白くないですねと。こちらは如何に不真面目になろうかとしているのに、まあ時代と逆行することはアナーキーで快感があっていいんじゃないかと話す。

旧山田邸に行くが、今日はコーヒーも紅茶のサービスもないので引き返す。

地塗りをしたキャンバスに寒山拾得を描く。寒山拾得は超俗の隠者、老齢期のワタシのアイドル。寒山は手に巻物(経典)の代りにトイレットペーパー、拾得には箒の代りに電気掃除機を持たす。

散歩をするより大きい絵を描く方がうんと運動になる。(よこお・ただのり=美術家)
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