第五六回 文藝賞 授賞式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2019年10月25日 / 新聞掲載日:2019年10月25日(第3312号)

第五六回 文藝賞 授賞式

このエントリーをはてなブックマークに追加

十月十一日、都内にて第五六回文藝賞授賞式が行われた。受賞作は宇佐見りん氏『かか』、遠野遥氏『改良』の二作。賞の贈呈後、選考委員のひとりである斎藤美奈子氏は次のように語った。

「『かか』は、自分のことを〝うーちゃん〟と呼ぶ十九歳の少女が、母子密着の状態から離脱していくストーリーです。母と娘の関係というと二人の確執を考えてしまいがちですが、もう少し複雑な問題が絡んでいます。
一方、『改良』は女装にはまり、外見を改良していく男性の内面の変化を語った作品です。女装を楽しむ話ではなく、これまでほとんど書かれてこなかった男性の性的被害の面から描いています。両作品とも現代の雰囲気を掬い取っており、新しい感受性が育ってきていると思いました」。

もうひとりの選考委員である町田康氏の講評は以下の通り。

「対照的な二作品を賞に選ぶことができました。『改良』は作者が書こうとしている明確な主題があり、展開があり、非常に無駄なく計画通りに話を進めていく。不慣れな人が書くと、余計なことや格好つけた文章を書いたりしますが、そういう無駄が一切ない。必要な部分が必要なだけ書いてあり、見事に主題を展開しています。

『かか』は対照的に、話や文章そのものが迂回的で文体にも特色がある。特に素晴らしいのは、人間の整理のつかない感情や、一瞬の思いが非常に正確に描かれているところです。誰が読んでも心に迫るものがある。人間、あるいは自分というものを深いところまで見つめ、文章化しようとしている作品です」。
宇佐見りん氏

受賞者挨拶では、まず宇佐見氏が両親や友人に感謝を述べながら次のように語った。

「この作品で私は、成長し損ねた人を描こうとしています。そういう人が人間を愛そうとするとどうなるのか、そこを掴まえたい一心で書いていました。あらゆる面で育ち遅れた主人公は、自分自身の最も意識したくない部分を突きつけてきます。目に余る言動と行動とを書いていくうちに、私自身、完全に他人であるとは言い切れなくなりました。しかし、それが苦痛だからとなまじ大人びた主人公にしてしまうと、現実の下に埋まっている真実を引きずり出すことはできません。無意識に誤魔化したり、美化することによって、歪められないよう力を尽くす。それが虚構の枠を抜け出し、何かを残すことにつながるのだと思います。人を憎み、責任をなすりつけ、傷つけながらも愛そうとする。そんな人間の狭く閉じた世界を描いたつもりです。

今後もやれるところまで書き続けようと思います」。
遠野 遥氏
最後に遠野氏が、受賞への想いを語った。

「小説を書き始めたのは、六年か七年前からです。選考の場を別にすると、自分の小説を誰かに読んでもらったことはなく、感想をもらうこともありませんでした。今まではそれでもいいと思っていましたが、今回、最終選考に残り、編集者の方たちから感想を聞いて、自分では気づかなかった発見がたくさんありました。もっと早く、多くの人に読んでもらい、フィードバックをもらっていればよかったです。

受賞したおかげで、より多くの人に読んでいただけるかもしれない。そのことを、本当に嬉しく思っています」。
このエントリーをはてなブックマークに追加
受賞のその他の記事
受賞
野間四賞決定
受賞をもっと見る >
文学 > 日本文学関連記事
日本文学の関連記事をもっと見る >