桜がなくなる日 生物の絶滅と多様性を考える 書評| 岩槻 邦男(平凡社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年11月4日 / 新聞掲載日:2019年9月27日(第3308号)

桜がなくなる日 生物の絶滅と多様性を考える

桜がなくなる日 生物の絶滅と多様性を考える
著 者: 岩槻 邦男
出版社:平凡社
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Iの悲劇(米澤 穂信)文藝春秋
Iの悲劇
米澤 穂信
文藝春秋
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 この本をなぜ手に取ったかというと,やはりタイトルである。「えっ!桜がなくなっちゃうの?」思わずそう考えた。タイトルは,十分にキャッチーで,読んでみたくなる。そうした動機から,まず本と出会うというのは悪いことではないと思う。

しかし,この本は,決して「桜がなくなること」を主題としたものではない。「はじめに」を読むとそのことはすぐにわかる。「…分かりやすく日本列島の植物の動態を概観することで,問題の本質について考えるきっかけを提供してみたい。」(p.11)というのだ。「桜」の話題は,全体の5分の1くらいと言ってもよい。

最初に,秋の七草に数えられているフジバカマとキキョウが,絶滅危惧種のリストに載っていると伝えられる。万葉集の頃から親しまれていた植物がなぜそうなってしまうのか,解説はわかりやすい。これに続いて,「生物多様性」について力を注いで書いている。難解な「生物多様性」という言葉の意味を述べたあと,「生物多様性がもたらしてきたもの」について遺伝子資源と環境問題を背景に説明を加える。しかし,それだけでなく「生物多様性」は,自然と接することによる「人の生き方」に関連している点も多いと力説している。

ここまで読み進めると「生物多様性」の重要度を伝えることが,この本の最大の目的だということがより鮮明になる。「桜」はそのひとつの材料なのだ。まだ日本の自生種のサクラには絶滅危惧種はないが,未来にわたってそう言えるのか,「サクラの現状だけから想定するのは危険」(p.161)と言う。またこうも言う。「一種でも生存が危うい種があるならば,それは生物圏全体に危機が及んでいることになる。」(p.161)

著者は植物の多様性についての研究の第一人者。専門的な著作も多いが,新書判のこの本には,幅広い知識に裏付けされた「科学エッセイ」の趣がある。その中に重みのある提言が随所に見える。
この記事の中でご紹介した本
桜がなくなる日 生物の絶滅と多様性を考える/平凡社
桜がなくなる日 生物の絶滅と多様性を考える
著 者: 岩槻 邦男
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
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