性質一元論 公理的性質論に基づく哲学的諸問題の解明 書評|和田 和行(せりか書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年11月2日 / 新聞掲載日:2019年11月1日(第3313号)

性質一元論 公理的性質論に基づく哲学的諸問題の解明 書評
浩瀚にして高水準な本格的哲学書
著者が構築した独自の論理体系が全貌を現す

性質一元論 公理的性質論に基づく哲学的諸問題の解明
著 者:和田 和行
出版社:せりか書房
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 本書『性質一元論』は、著者である和田和行氏が長年取り組んでこられた研究の集大成である。本書において著者は基礎となる論理体系をはじめに明示し、それに基づいて存在論、認識論、言語哲学を展開する。特筆すべきは、著者がこれまで論文として公表してきた成果が本書において総合され、著者が構築した独自の論理体系がついにその全貌を現した、ということである。著者の体系は、様相論理S5と公理的集合論ZFを融合させたものである。海外の研究者によってもいくつかの体系が提案されているが、本書の体系はそれらに比して簡潔であり、多くの点で優れている。しかも全くのオリジナルである。様相集合論とも呼べるこの体系を、著者は「公理的性質論」と呼ぶ。現代数学の基礎は集合論であり、その限りで数学的対象はすべて集合とみなせるが、公理的性質論は、集合論が数学に対してそうであるように、哲学の基礎であり、したがって存在するものはすべて性質となる。本書のタイトル「性質一元論」はこのことを意味している。

だが、存在の元素がなぜ性質なのか。はたして性質とはなにか。本書のもうひとつの背景はカルナップの意味論である。カルナップは様相論理を展開するのに不可欠な内包の概念を整備し、現代の形式的意味論の基礎を築いたが、性質はその内包の中で最も基本的なものなのである。したがって本書は、カルナップ意味論のさらなる発展の試みでもある。故永井成男氏とその門下は、カルナップ哲学の紹介に尽力したが、著者もまたその一員であって、本書はいわば、このグループの研究活動のひとつの到達点でもある。

さて、S5とZFの融合は、このように書いてしまえば簡単であるが、そもそもこれを思いつくということからして決して尋常のことではない。この素晴らしいアイディアがあたかも天使のように著者の脳裏に舞い降りたとき、著者の心は論理学者であることの幸福で満たされたに違いない。この誰にでも訪れるわけではない奇跡の瞬間を概念の体系に結晶化してみせた著者の力量にはただ恐れ入るばかりである。

本書は二部からなるが、評者の見るところ、内容は大きく三つの部分に分けられる。基礎的な部分と、基礎的な応用の部分、そして、さらに一般的な応用の部分である。基礎的な部分ではS5とZFの融合が実行されるが、それに続いて全体部分論(メレオロジー)や時空論が展開される。目を引くのは、公理的性質論の無矛盾性、公理の独立性の証明である。この非常に技術的な話題の詳しい解説は少なく、この箇所は論理学者の仕事の手際が実感できるありがたい記述である。そして、パラドックスの分析など、記号論に属する話題が論じられるが、近代哲学の諸説(スピノザ、ライプニッツ、カント)の検討が含まれているところが興味深い。ここには著者の独自の見解も披露されており、専門家にとっても有益な鋭い指摘を含む。

浩瀚にして高水準な本格的哲学書の登場を大いに喜びたい。
この記事の中でご紹介した本
性質一元論 公理的性質論に基づく哲学的諸問題の解明/せりか書房
性質一元論 公理的性質論に基づく哲学的諸問題の解明
著 者:和田 和行
出版社:せりか書房
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